冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心


冬休みまであと1週間を切った月曜日の放課後。
朝陽が気を回してくれて、小森と一緒に下校できることになった。

本当なら、自分で誘えばいいんだろうけど。
朝から声を掛けるタイミングを何度も図ってるのに、俺を避けてるのか、タイミングが合わない。
そもそも『距離をおきたい』と言われ、いつまでなのか分からず、声をかけていいのかすら分からない。

そんな俺に痺れを切らした朝陽が、小森をというより、長瀬を丸め込む作戦で落としたようなもの。
さすが、朝陽。
こういうことだけは尊敬する。

当たり前のように朝陽は長瀬に声を掛け、俺と小森の少し前を歩く。
これだけ絶妙なパスを2人から貰ってるのに、最初の言葉がかけづらい。
何故か、隣りを歩く小森の視線が刺々しい。
俺、何かしただろうか?

「冬休みはどこかに行くのか?」
「たぶん」
「クリスマスは?」
「母と出掛ける予定になってます」
「………」

何故だろう?
視線が全く合わない。
というより、真っすぐ前を向いたままで、俺の方に顔を向けることすらしてくれない。
体調でも悪いんだろうか?

「体調が悪いのか?」
「別に悪くないです」
「何か、悩み事でも?」
「特に悩み事もないですけど」

あっ、違和感の正体はこれだ。
俺に対して、何故か敬語になってる。

少し前の小森は、タメ口に近い感じでフランクに話しててくれたのに。
話さなかった間に、何かあったんだろうか?

視線が刺々しいんじゃなくて、態度そのものが爆弾みたいで気になって仕方ない。

駅に到着し、改札を抜ける時に朝陽に耳打ちする。
『家まで送って来る』

< 86 / 132 >

この作品をシェア

pagetop