冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心
電車に乗り込み、いつものフォーメーションのように長瀬の横に朝陽、俺の横に小森の状態で位置取りすると。
あからさまに小森が長瀬の隣りに行こうとした、その彼女の手首を無意識に掴んだ。
「ッ?!!」
「ごめん、ちょっと話がある」
強硬手段なのは分かってる。
だけど、こんな風に冷たい態度を取られると、どうしようもなく焦る自分がいる。
視線を泳がせた、その時。
長瀬から恐ろしいほど鋭利な視線が向けられていることに気付いた。
え、何でそんな目で見るんだよ。
近くに一般客がいなかったら文句を浴びせるところだが、さすがに大人げないと思って我慢する。
地下鉄の車内で声を荒げるとか、ダサすぎる。
朝陽が降りて、数駅先の長瀬が降りる駅に到着した。
「じゃあ、まどか、また明日ね」
「うん、また明日」
「上條、まどかを泣かしたら、ただじゃおかないから」
怒気を含ませ吐き捨てて行った長瀬。
何だかよく分からないけど、めっちゃ釘刺されたんだけど…。
混乱する脳内の整理がつく間もなく、人形町駅に着いてしまった。
電車を降りてホームから改札口へと階段を上がる。
いつもなら改札口の手前で別れるんだけど、そんな状況じゃない。
「自宅まで送ってく」
「へ?」
「ってか、ちょっと寄り道して、話さない?」
「………」
「俺が小森と話したい」
「………」
立ち止まる小森の手首を掴んで、改札口を抜けた。
「近くに公園とかある?」
「……はい」
「じゃあ、そこ連れてって」
俺の圧に負けたのか、小森は公園へと歩き出した。