冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

毎日のように放課後は音楽室か生徒会室で練習する。
個人練習と映像と併せた実践練習を。

自宅に帰っても自主練は欠かさない。
だって1年のブランクがあるから。
やるからには完璧でありたい。
後悔はしたくないから、私は何事も常に全力で取り組む。



朝陽がデートに誘われ、廉と一緒に帰らない日の放課後。
徹夜で本を読み耽ったせいで睡眠不足の廉は、空き教室で昼寝していた。

どこからともなく聴こえて来るメロディーで目を覚ます。
すっかり辺りが暗くなっていることに驚き、リュックを肩に掛けた。

帰ろうとしていた廉の足が、曲に誘われるように勝手に向く。
辿り着いたのは4階の音楽室。

テンポよく紡がれる楽し気な音色に、廉はドアをほんの少し開けて中を覗いた。

すると、そこにいたのは自分の後ろの席の小森 まどか。
真剣な表情で何度も同じところを練習している。

「結構上手いじゃん」

一カ月ほど前に、下校途中の電車内で痴漢に遭遇している小森を発見し、無意識に助けていた。

基本、物にも人にも執着しない性格の廉。
どんな事にも熱くなれない冷めた性格で、これまで好奇心をそそられたものは一つも無い。
勉強でもスポーツでも適当にやっても常に成績優秀で、達成感だとか向上心だとかとは無縁。

そんな廉の視線の先に、陽気な曲を至極真剣な表情でピアノを弾くまどかがいた。

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