冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心


母親の仕事に同行して福岡に到着し、ライブ会場に程近いホテルにチェックインした。
母親はすぐさま事務所スタッフとライブ関連のスタッフとの打ち合わせをするためにライブ会場へと行ってしまった。

いつも行ってるラーメン屋さんにでも行こうかな。
荷物を部屋に置いて、博多ラーメンの美味しいお店に行くことにした。

母親の仕事に帯同して一番のメリットが、名物の美味しいものが食べられるということ。
お土産ももちろん買うけれど、やっぱり現地で新鮮なその物を頂くのは贅沢そのものだ。

夕方の混雑する時間の少し前ということもあって、並ばずに食べられた。
やっぱり博多ラーメンは美味しい。

そのままホテルに戻って部屋に籠るのは勿体ない気がして、電車で天神まで繰り出し、ショップ巡りをする。
お洒落な服や雑貨が沢山あって、和香が好きそうな小物類も多い。

「和香にお土産買おうっかな」

モールだけでなく、駅周辺のショップも少し廻って、和香とお揃いでヘアピンを購入した。
陽が沈み、足先が痛むほど凍える。
ロングスカートにタイツとショートブーツを履いてるが、ムートンブーツの方が良かったかも。

駅へと向かおうと、スマホの地図を立ち上げた、その時。
ブブブッとスマホが震えた。
……上條君だ。

終業式の日以来、彼から何度も電話とメールが来ている。
けれど、それらを全てスルーしてしまってる。

電源を落としていて、気付くのが遅くなってしまって。
立ち上げた時には、大量のメッセージが。

何て返信したらいいのか分からなかったし、今さら感が否めなくて。

どうしよう。
これに出て、謝ろうかな。

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