冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

「もしもし?」
『あ、出た』
「……返信できなくて、ごめんなさい」
『あぁ、別にいいけど』

電話の声はちょっと低くて。
いつも落ち着てる感じの彼の声が、さらにゆっくりと聞こえる。

『今、何してんの?』
「買い物したとこ」
『何買ったの?』
「和香とお揃いのヘアピン」
『へぇ~、いいな、お揃い』
「花がモチーフの可愛いヘアピンだよ」
『じゃあ、今度学校にして来て』
「……うん」

久しぶりだから緊張してたのに、電話に出たら、意外にも普通に話せてる。

「上條君は何してたの?」
『朝陽んちでまったりしてた』
「藤宮君ちにいたんだ」
『……ん』
「今、福岡なんだけど、明太子と苺スイーツならどっちがいい?」
『へ?』
「お土産、買って行こうと思って」
『学校に明太子持ってくんの?』
「明太子味のお菓子だよ」
『あーねー』

本物の明太子を買って行けないことは無いけれど、どうせ冷凍物になる。

『どっちでも。小森がくれるんなら、何でも嬉しい』
「っ……」

また、そんなことを言う。
そうやって、甘い言葉をポンポンと……。

『もしもし?……小森、聞こえてる?』
「うん、聞こえてるよ」
『休み中、ずっと家に帰って来ないの?』
「始業式の前日に帰る予定だけど」
『前日かぁ…』
「それが、何か?」
『あ、いや、何でもない』

電話越しでも何となく伝わって来る。
ちょっと気落ちしたんじゃないかな。
なーんて、勝手に妄想してしまった。

『明日もかけていい?』
「……ん」

今度はちょっと気分が上がったかも。
電話越しの吐息がちょっと嬉しそうに聞こえた。

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