冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

始業式の朝。
学校とは反対方向へと向かう地下鉄に乗り込んだ廉。
久しぶりに小森に会えるのが嬉しくて、胸がそわそわとしている。

小森の自宅が程近い最寄り駅の人形町駅で降車し、改札口へと。
通勤通学の人々が通過する改札口の内側で待っていると、口元をマフラーで覆った小森の姿を捉えた。

ICカードで改札を抜け、俺の元へとやって来た小森。

「おはよ」
「明けまして、おめでとう。電話で言いそびれたから」
「あけおめ。今年もヨロシクな」
「うん、こちらこそ」

前髪を横に流し、可愛らしいヘアピンが目に映った。

「お揃いのヘアピンって、それ?」
「うん」
「可愛いし、よく似合ってる」
「っ…」

新年早々、照れた可愛い顔が拝めた。
今年は良い年になりそうな予感。

ホームで電車待ちをしていると。
目の前に小さな紙袋が現れた。

「これ、上條君に」
「俺に?……お土産?」
「ううん、渡しそびれたクリスマスプレゼント」
「ッ?!!見てもいい?」
「えっ、今?」
「ん、今」
「……別にいいけど、大したものじゃないよ?」

スマホで確認すると、電車の時間までまだ4分ある。
素早く紙袋に手を入れ、中の袋を取り出す。

「ヘアワックス?」
「うん。伯父さんの会社と契約してるプロのヘアメイクさんお薦めのやつなんだけど」

蓋を開けて香りを嗅ぐ。

「めっちゃいい匂い」
「いつも軽くアレンジしてるから、消耗品なら負担にならないかなと思って」
「色々考えてくれてありがと。すっげぇ嬉しい」

ワックスの容器を袋に戻し、それを鞄にしまうと、ホームに電車が入って来た。
小森に何お返ししようかな。
満員電車なのに、やべぇ、顔がにやける。

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