好きになったあの日から。
かっこいい

なにかちがう

「レオ、ナイスキー!」
大きな声が耳に入り、ふと体育館を覗くと、バレー部が練習してた。
タタタッ……バシッ!
きれいな腕の振り、反り返った背中、高い高いジャンプ。
「かっこいい…!」
(バレーってこんなにもかっこいいスポーツなんだ…。やりたい、私もあんな風になりたい。)
走って家に帰って親に相談すると、快く受け入れてくれた。
同じクラスにバレー部に入っている夏都という女の子がいて、夏都を通して監督さんに伝えてもらった。
(早く、早くバレーがしたい。あの人みたいになりたい。)
そう願いながら、今日は眠った。


*


「アイー!おはよ!」
そう言いながら私の方に走ってきたのが夏都。幼なじみで、ずっと仲がいいの。
私の名前は藍菜。あいなの『アイ』という意味の愛称だって。
「ナツ、おはよ!」
いつものように返事した。
「アイ、バレー入りたいんでしょ!?めっちゃ嬉しい!」
その場でナツはぴょんぴょん跳ねてる。
よっぽど嬉しいみたい。
「うん。」
「これからよろしくね!昨日監督に聞いたら『土曜日体験に来てみて』って!」
土曜日…。土曜日に、またあの人の打つやつが見れるんだ…!
「うん、楽しみ!」
そうだ、ナツにあの人のこと聞いてみよう。
「ねえナツ、バレーに男子っている?」
「うん、今は7人かな。」
やっぱり、女子バレーじゃないみたい。
「そこにさ、背の高くてジャンプしてボール打つやつが上手い人っている?」
「ジャンプしてボール打つやつ…あ、スパイクのこと?それなら琥太朗じゃない?6年生の坂木琥太朗。」
あ、スパイクって言うんだ。
名前は坂木、琥太朗……って、
「うちの会長じゃん!」
「そう、バレーやってるって知らなかったの?」
「あんまり、興味なかった。」
「まぁ、男の会長だし、あんまりうちらと関わりないからね~」
「うん…」

私とナツが通う学校、市立蒼峰小学校には、生徒会長が男女一人ずついる。
その男の会長が、坂木琥太朗。
頭が良くて、身長が高いことで有名。
だけど、まさか会長なんて想像してなかった。
「なに?琥太朗がどうしたの?」
「いや、この前体育館覗いたときにスパイク…?打ってて、かっこいいな~って思って。」
「ふーん。琥太朗を、ねぇ…」
え、なんか私変なこと言った!?
「まぁ、いいや。土曜日のお楽しみってことで!」
「なにが?お楽しみってなに?」
「おっしえなーい!」
ナツは走り出した。
「もー、教えてよ!気になるじゃん!」
追いかけたけど、なかなか教えてくれないから、ナツの言う通り、当日までの楽しみにしておくことにした。


*


土曜日になって、体育館に行った。
体育館に入ると、ナツと背の高い人が出てきた。
(ナツと、もう一人は誰だろ…?身長170はあるよね。あ、誰かのお母さんとか?)
「アイー!いらっしゃい!
ミツキ、この子が藍菜だよ!」
「そっか!藍菜ちゃんよろしくねー!
私が蒼小バレー部キャプテンの伊藤水月です!」
「よろしくお願いします…!」
「うん!じゃあ藍菜ちゃん、中に入って入って~!」
「うん!」
(ミツキちゃん、すごく優しいな。
仲良くなれそう…!)
「体育館に入るとき、大っきい声で『お願いします』って言ってね!」
「うん!」
少し緊張する。わくわくしながら足を踏み出す。
「お願いします!」
そういって体育館の中に入った。
一気に視線が私の方に集まる。
「おー、噂の新人?」
「多分。てか身長5年の中で一番でかいじゃん。」
そんなことが言われていたのを私は知らない。



< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop