愚痴
 けれど、そんなことも長くは続かず、それから一ヶ月も経たないうちに、環奈が言った。

「二組の片岡君に告白された」
「え、マジ?」
「うん……」

 環奈のモテぶりには驚かされた。

「で? 付き合うのかよ」
「基樹はどう思う?」

 何と答えようか、と基樹は考えを巡らせた。
 片岡はいい奴だった。そして、文武両道というやつだ。スポーツマンで勉強も出来て、優しくて男らしくて、非の打ち所がないいい男だった。

「片岡はいい奴だけど、あいつすげえモテると思うから、環奈の性格だときついんじゃねえの? 焼きもちとか……」
「そっかぁ。さすが基樹、よく分かってるねえ」

 基樹は環奈の次の言葉を待った。

「じゃあ断ろっと」

 言ってみるもんだ、と基樹はほっと胸を撫で下ろした。


 秋になって、志望校を決めかねていた基樹は、環奈からの「一緒の高校行きたいな」の一言で、即決した。

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