運命の恋を、君と…
「あのさ。
◯◯地区の配達担当している男に会いたいんだが。
昨日、昼の2時頃に◯◯に配達した男」

「はい。
失礼ですが……」

「名は名乗りたくない。
そいつが俺を見ればわかる」

「でも今、配達中でして…」

「だったら、ここに呼べ。
今すぐに」

「は、はい」
俊英の雰囲気に、職員は慌てたように連絡する。


数十分後、配達員が現れた。
「あ、あんた…」

「ちょっと面貸せ」

営業所の裏に移動する、二人。


「━━━━━な、なんですか?」

「言いたいことは一つだけ。
二度と、蓮花の前に現れるな!」

「僕は何も……」

「何も?
お前のせいで、蓮花は家に帰ることすら恐怖で怯えてる。
これのどこが“何もしてない”になる?
お前は“ただ挨拶をしてるだけ”と思っていても、蓮花はその“ただの挨拶”が恐怖だった」

「………」

そして俊英はスマホを取り出し、カメラレンズを配達員に向けた。
「今、約束しろ。
二度と、蓮花に会わないと」

「………わかりました…」
俊英の恐ろしい雰囲気に、呟くように言う。

「ちゃんと、約束しろよ」

「もう、二度と蓮花さんの前に現れません」
その様子を、ビデオに撮った。

「ん。
…………あ、言っておく。
約束破ったら、俺はあらゆる方法でお前を地獄に落とすから」
たった今撮ったビデオを見せながら言った、俊英。
その場を後にした。



一方の蓮花。

「━━━━━本当に大丈夫かな?」

今日も帰るとマンション前に配達員がいると思うと、不安で何も手につかない。

「いやいや、俊英が“任せて”って言ったんだから!
大丈夫!大丈夫!」

そう言い聞かせて、その日の仕事をこなした。
仕事が終わり、退社する。
「蓮花、お疲れ~」
「うん!お疲れ!」
御子と手を振り別れ、駅に向かおうとすると……
会社の外には、俊英がいた。

「え?俊英!?」

「お疲れ!
やっと、出てきた!」

「え?どうしたの?」

「一緒に帰ろうと思って、迎えに来た」

「そっか!」
(良かった……)
心底ホッとして、思わず俊英のジャケットを握る蓮花。

「…………やっぱりな」
そんな蓮花の頭に手を置く、俊英。

「え?」

「不安だったんだろ?
一人で帰るの」

「うん…ごめん」

「謝るなって!
ほら、帰るぞ!」
微笑む俊英に、蓮花も微笑んだ。


「━━━━もう、大丈夫だからな!」
帰りの電車内で、安心させるように言った俊英。

「え?」

「“あいつ”
もう二度と、蓮花の前に現れないように話したから」

「ほん…とに…?」

「あぁ。大丈夫だよ」
並んで座っている蓮花の頭を、ポンポンと撫で微笑んだ。

「そ、そっか……!良かった……ありがとう…ありがとう、俊英!」

泣き笑いのような顔の蓮花。
俊英は優しく、蓮花の目元をなぞった。
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