結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
居酒屋を出てその足で役所へ行き、婚姻届を提出した。
こんな考えなしな行動ができるなんて、酔った勢いって恐ろしい。

「結婚したんだから今日はもちろん、俺んちに泊まるよな?」

「そうだねー」

もうその気なのか、矢崎くんはタクシーを捕まえて私を押し込んだ。

「そういえば矢崎くんちって初めていくな」

入社以来の付き合いで、私の家には何度も送ってもらっている。
しかし一度だって、彼の家に行ったことはなかった。
よく考えたら、どこに住んでいるのかすら聞いたことがない。

「そうだっけ?」

彼はすっとぼけているが、なんか誤魔化された気がするのは気のせいだろうか。

タクシーは立派な高層ビルの下で止まった。
まさか、ここに住んでいるなんてはずはない。

「えっと……」

「急な泊まりだからなにも準備してないだろ?」

彼が指した先にはコンビニがあり、ほっとした。

急場しのぎの化粧品や下着一式をかごに入れる。

「飲み物も買っとけよ。
うち、水しかないし」

「りょーかーい」

水しかないとは、いかにも男の一人暮らしって感じでちょっと笑ってしまった。
さりげなく、矢崎くんがかごに小箱を入れてきたけれど、なんだろうね、これ。

少し悩んで二リットルの麦茶を足す。
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