結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
くらーい気分でくらーいホラー映画を観ていたら、矢崎くんが帰ってきた。

「今日は純華のくれたこのネクタイのおかげで、成功したぞ!」

ソファーにいる私の隣に座り、抱きついて熱烈にキスしてくる。
滅多に酔わない矢崎くんだけれど、今日はちょっと酔っているのかな。
それだけ嬉しいんだろうし、プレッシャーから解放されて気が抜けているのもあるだろう。

「お役に立てたんならよかったよ」

無理矢理でも笑顔を作って彼の顔を見上げる。
私が今、いつ別れを切り出そうか悩んでいるなんて知られてはダメだ。

「会長から近いうちに今後について話をしようって言われたし、これで純華を家族に紹介できる。
待たせたな」

うっとりと矢崎くんの手が私の髪を撫でる。

「……うん、ありがとう」

しかし私の心は、どんどん重くなっていく一方だった。
上手く笑えているかすら、不安になる。
でも、ちょっとテンションの高い今日の矢崎くんは気づいていなくて、助かった。

「結婚式、どうする?
純華のドレス姿は絶対、綺麗だろーなー。
あ、でも、和装も捨てがたく……」

想像しているのか、彼は真剣に悩んでいる。
それを、笑顔を貼り付けて見ていた。
……私もウェディングドレスを着て彼の隣に立ちたかったな。
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