結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
開放的な気分になって思いっきり深呼吸し、別荘へと戻る。
ちょうど矢崎くんも、イブキのケージを設置し終わったところだった。

「ごめんね、全部やらせて」

「いいよ、別に。
純華のためだったらなんだってするし」

キスしてくる唇が、くすぐったくて気持ちいい。

「海に出られただろ?」

「すっごい気持ちよかったー」

冷蔵庫からペットボトルと、棚からグラスをふたつ出して掴み、矢崎くんがソファーへと向かっていく。
目でおいでと言われ、腰を下ろす彼の隣に私も座った。

「プライベートビーチなんだ。
ここにいるあいだは俺たちふたりだけのもの」

「あと、イブキもね」

「あん!」

意味がわかっているのかイブキが得意げに鳴き、ふたりで笑ってしまった。

矢崎くんが注いでくれた炭酸水で、少し渇いていた喉を潤す。

「素敵な別荘だね」

まるで南国リゾートのようで、ここが日本だと忘れそうだ。

「去年、リフォームしたばかりなんだ。
祖父ちゃんは引退したら、ここに住むつもりらしい」

「ほえー」

つい、周りを見渡してしまう。
こんな素敵なところで余生を過ごせたら、いいだろうな。

「腹、減ってないか。
なんか作るよ」

少し休憩したあと、矢崎くんが立ち上がる。

「え、私が作るよ!」

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