結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
大慌てで矢崎くんがティッシュで、汚れた服を拭いてくれる。
それを別の世界の出来事のようの見ていた。

「あとで洗濯機……って、スーツを洗濯機にかけたらヤバいよな。
夜間ってクリーニングできたっけ……?」

「ねえ」

携帯でなにやら調べ出した彼を止める。

「これくらい大丈夫だから。
それより、確認したいんだけど」

これは私にとって、重要問題なのだ。
場合によっては即離婚もありうる。

「矢崎くんが会長の孫って本当?」

私の聞き間違いであってくれと、願いながら彼の返事を待つ。
その僅かな時間が私には永遠に感じられるほど長かった。

「本当だけど?」

しかし、矢崎くんは私の期待を裏切り、あっさりと肯定してきた。

「でもさ」

無駄だとわかっていながら、それでも最後の望みにかける。

「会長と名字、違うよね?」

「ああ。
母方の祖父になるんだ。
それで」

その答えを聞いて、少しだけほっとした。
矢崎くんの父親はあの男ではない。
それには救われたけれど彼がアイツの血縁者なのは違いなく、複雑な気持ちだった。

「なんで、会長の孫で後継者だって隠してるの?」

知っていればこんなことにならなかった。
なんて彼を責めるのはお門違いだってわかっている。
それでも、不満はあった。

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