結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
しかし私も反射的に、勢いよく立ち上がった。

「俺が。
純華のために作りたいの」

「私も、矢崎くんのために作りたいの」

レンズ越しに少しのあいだ、睨みあう。
しかしすぐに、どちらからでもなく噴き出した。

「一緒に作るか」

「そうだね」

笑いながらキッチンへ向かう私たちを、イブキが不思議そうに見ていた。

「なん作るかなー」

冷蔵庫を開けて、矢崎くんはメニューを考えている。

「てか、食材、買いに行かなくていいの?」

ここに来るのに、なにも買わないできた。
冷蔵庫の中は空では……?

「管理人に適当に買って入れといてくれって頼んだから、ほら」

場所を空けて矢崎くんが中を見せてくれる。
そこにはパンパンに食材が詰まっていた。
というか、これをふたりで食べきるのは無理じゃない?

「エビがあるから、トマトクリームパスタにするか」

決まったのか、テキパキと彼は材料を取り出した。

「じゃあ、私はなんか、サラダ作るね」

今度は私が、冷蔵庫の中をのぞく。
ベビーリーフと玉子で、ミモザサラダか温玉サラダにしようかな。

ふたりで並んで料理をする。

「なんか、新婚っぽいね」

「っぽいんじゃなくて、新婚なんだが?」

指摘され、おかしくて笑ってしまう。
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