結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
なんかいつの間にか、矢崎くんとこうやって一緒に過ごすのが当たり前になっていた。
あまりに自然すぎて、もうずっとこうしている気さえする。
それくらい、彼と一緒にいるのは心地よかった。

「いただきます」

できた料理を並べ、ダイニングテーブルで向かいあって食べる。
イブキは散々嗅ぎ回って落ち着いたのか、ケージに入ってお気に入りのタオルの上で寝ていた。

「矢崎くんって料理、上手だよね」

素材がいいのもあるかもしれないが、今日のパスタももちろん、美味しい。

「やった、純華に褒められた」

上機嫌に彼がフォークを口に運ぶ。
こういう小さなことですぐ喜ぶところ、ちょっと羨ましくもある。

「純華が料理が上手な人が好きだって言ってたから、いつか披露できるように腕を磨いてたんだ」

「……は?」

フォークを口に入れかけて、止まる。
そのまま皿に戻し、まじまじと彼を見つめていた。

「言ったっけ?
そんなの」

「言った。
入社した年の、夏にやった同期親睦キャンプで」

「あー、あったねー、そんなの……」

誰が計画したのか、上司から用がない限り絶対参加だって言い渡されて、嫌々参加した、あれ。

「親睦会とかいって、実は研修でしたーって卑怯だよね」

「まあな」

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