結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「そ、そうだっけ……?」

ここまではまだ、かろうじて耐えられるのだ。
問題はこのあとだ。

「瑞木、格好いいって尊敬してたら、そのままバタンと倒れたけどな」

おかしそうに矢崎くんが笑う。
覚えてる、覚えてるよ!
だからこそ、取引先に対する無理強いを憎んでいたからとはいえ、自分の行動が恥ずかしい。
今ならもっとスマートに、かつ自分にダメージがないようにやれるのに。
でも、あのときの行動は後悔していないが。

「んで、カンカンの社長を無視して、介抱しないといけないのでーって、とっとととんずらした」

そこで話は終わりだと思ったのに、彼の話は続いていく。
この先は酔い潰れて、私の記憶にはない。

「近くのホテルに運び込んで水飲ませたりしてたら、自分のほうが大変な状況なのに、俺は大丈夫か聞いてくるんだ。
大丈夫だ、おかげで助かったって答えたら、よかったーってすっげー嬉しそうに笑って。
あれが、純華に惚れた瞬間だったな」

そのときを思い出しているのか、眼鏡の向こうで目を細めて矢崎くんがうっとりとした顔をする。
次の日、ホテルで目が覚めたときはパニクったものだ。
< 145 / 193 >

この作品をシェア

pagetop