結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
でも、ベッドは私に譲って自分は椅子で夜を明かした彼に申し訳なくなったし、同時に見直した。

「あー、うん。
そうなんだ……」

あれで惚れられたと聞いても、私としては葬り去りたい過去なだけに、複雑な心境だ。
それに翌日、上司から呼び出されてふたりともこってり絞られたし。
矢崎くんには本当に迷惑をかけた。
……いや。
今の話からするに。

「もしかして、いらぬお世話だった?」

矢崎くんなら私が変な手を出さなくても、あのままやり過ごせたのだ。
でも、私のせいで上司からは怒られ、私の介抱まで。

「いや?
純華のおかげで抜け出すきっかけができたし、それに」

伸びてきた手が、さらりと私の頬を撫でる。

「俺を庇ってくれたのが、滅茶苦茶嬉しかった。
あれでよろめいて、笑顔でトドメ刺されたな」

まるで空気に溶けるかのようにふわりと彼が笑い、頬が熱を持っていく。

「そ、そうなんだ」

「うん」

どきどきと心臓の鼓動が速い。
こんなにも前から、矢崎くんは私を想い続けていてくれたんだ。
それはとても嬉しくて、この笑顔を一生覚えていようと思った。
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