結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
昼食を食べ終わり、まったりとする。

「せっかくプールがあって海にも出られるのに、水着がないもんなー」

前もって言ってくれれば、準備していたのだ。
でも、どこに行くのかは秘密って教えてくれなかったし。
残念だ。

「水着?
あるぞ」

アイスコーヒーのグラスを置き、矢崎くんが悪戯っぽく笑う。

「うそっ!?」

「こんなロケーションで、俺が準備してないとかあると思う?」

なぜか彼は得意げだが、私の分まで用意しているとか思わないよ、普通。

「寝室に……」

そこまで言って、なにか思い出したかのように矢崎くんが止まった。

「あ、いや、持ってくるから脱衣所で着替えたらいい」

やましいことでもあるのか、彼の視線は定まらず、せわしなく動いている。

「なにか、隠してるの?」

口端がぴくぴくと引き攣る。
あれは絶対、ろくでもないことだ。

「ちょっと待て、純華!」

矢崎くんの制止を振り切り、二階へと駆け上がる。
ここかと当たりをつけた部屋を開けて、固まった。

「……なにこれ」

ベッドの上には赤バラの花びらでハートが描かれ、さらには夜の雰囲気を演出するようにか、キャンドルライトも置かれている。
どう見ても新婚、しかも初夜仕様だ。

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