結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「あー、あとで片付けておくつもりだったのに……」

追いかけてきた矢崎くんが、気まずそうに花びらのハートを崩す。

「なんか祖父ちゃんのテンションが上がったのと、依頼を受けた管理人が悪ノリしたっぽくってさ……」

矢崎くんがやったんじゃないのだけは理解した。
しかし。

「なんで会長のテンションが上がるのよ?」

「誰と行くのか聞かれたから、近いうちに紹介したい人って答えたんだよなー。
それで」

「はぁ……」

それは仕方ない……のか?

「誰とか、どんな人とか、そんな話もしたの?」

私の名前を聞いたところで、会長はきっと気づかない。
そのために父は離婚し、私たちから離れたのだ。
だからなんの問題もなく、今の会社に入れた。

「いや。
紹介したい人としか言ってない」

それでも、矢崎くんの答えを聞いて、少しだけほっとした。

矢崎くんが準備してくれていたのは、白の、オフショルダー水着だった。
胸回りのフリルは可愛い。

「ど、どうかな?」

自分は洗面所で着替え、リビングで待っていた彼の前におずおずと出る。

「可愛い……!」

私を見た途端いきなり携帯をかまえ、矢崎くんはバシバシ写真を撮り出した。

「えっ、ちょっ、……ストーップ!」

「えーっ」

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