結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
最後に彼に抱いてもらって、想い出を作りたい。
子供は……できていたらいいな。
私と紘希の、愛の結晶。
この子がいればきっと、紘希がいなくても淋しくない。

「ごめん、本当にごめん」

いくら謝ったところで彼には聞こえないのに、謝罪の言葉ばかりが口から出てくる。
やっと私がその気になってくれたって、紘希は嬉しそうだった。
でも私はもうすぐ、いなくなる。
これって最大の裏切りだってわかっていた。
私だってできれば、紘希とずっと一緒にいたい。
しかしそれは、許されないのだ。

「好きだよ、紘希。
愛してる」

あのとき、酔った勢いで紘希と結婚なんかしなければ、こんな気持ちを味わわなくてよかった。
けれど、少しのあいだでもこんなに幸せな気持ちにさせてくれたこの結婚を、私は絶対に後悔しない。

「純華、まだ起きてるならアイス……」

しばらくして紘希が部屋に戻ってきて、慌てて寝たフリをした。

「もう寝たか」

枕元に座った彼が、私の髪を撫でる。

「……純華はいったい、なにを考えてる?」

その言葉にドキッとした。
思わず目を開けそうになったが、耐える。

「まさか、……な」

淋しそうに呟き、彼はまた部屋を出ていった。
もしかして紘希は気づいている?
ううん、そんなはず、ない。



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