結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
こんなに真剣な顔をして、紘希はなにを言っているのだろう。
彼の手が伸びてきて、私を抱き締める。

「……覚えておいて」

誓うようにきゅっと一瞬、彼の腕に力が入った。
離れた彼が、淋しそうに笑う。
それは信じてもらえなくて傷ついているようで、私の胸まで痛くなった。

「紘希……?」

「あーあ。
またあさってから仕事かよ。
このままずっと、ここで純華を可愛がっていたいなー」

今までの深刻な空気が嘘のように、急に紘希が明るい声を出す。

「いや、可愛がられるのはちょっと……」

歩き出した彼を追う。
それはまるで追求は許さないようで、それ以上聞けなかった。

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