結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
鏑木社長はオレは会長のひとり息子だ、ゆくゆくはこの会社はオレのモノだ、なんて威張っているが、実際はすぐにでも辞めさせたいが会長の子供可愛さで、当たり障りのない子会社の社長をやらせてもらっているのだ。

「アイツと親戚になるのが不安なんだろ?」

眼鏡の下で眉を寄せ、矢崎くんが私をうかがう。

「そ、そうだね」

それに曖昧に笑って答えた。
鏑木社長と親戚になるのが不安なのは事実だ。
ただし、その理由は矢崎くんが思っているのとはちょっと違うが。

「純華はあんな、最低野郎と親戚付き合いなんてしなくていいよ。
てか、俺がさせないし、プライベートでは会わせない。
だから、心配しなくていい」

安心させるように彼がにかっと笑う。

「う、うん。
ありがとう」

彼の気持ちは嬉しかったが、私はなおいっそう不安になっていった。

アイスも食べ終わり、矢崎くんは私を先にお風呂に入らせてくれた。

「矢崎くんが会長の孫……」

酔いもすっかり醒め、ここに来たときの高揚感はすでにない。
それよりも彼と勢いで結婚してしまった後悔が押し寄せていた。

「どーしよう……」

鏑木社長は私の家族を離散に追い込んだ人物だ。
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