結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「まだ正式に結婚も決まっていないのに、孫が結婚相手に連れてきた方の顔が早く見たくて、じじいがわがままを言ったのです。
今日は気楽な食事会ですから、そんなに緊張しないでください」

「はぁ……」

会長は笑っているが紘希の祖父というだけでも緊張するのに、さらには弊社の会長なのだ。
気楽になんて無理に決まっている。

ランチのメニューは決まっているので、すぐに料理が出てき出す。

「瑞木さんの惚気は散々、紘希から聞かされていましてね」

「そ、そうなんですか」

ちらりと紘希を見たが、視線を逸らされた。
いったい、なんの話をしていたのか気になるが、聞くほどの勇気はない。

「そんなに紘希が惚れている相手なら間違いないだろうと思っていましたし、このあいだお話を伺ったときも大変しっかりしていらっしゃった」

思い出しているのか、うん、うん、と会長が頷く。
このあいだとは育児中社員のフォローで話を聞かれたときの件だろう。

「しかもああいうときは不満ばかり出てくるものですが、相手の方も気遣っていらした。
紘希からあなたと結婚したいのだと聞いて、嬉しく思ったものです」

「えっ、あっ、そんな、畏れ多いです」

会長が私に微笑みかけ、その優しげな顔に頬が熱を持っていく。
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