結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
紘希の、あのすぐ私を惑わせる笑顔は、祖父譲りらしい。

食事をしながら、和やかに話は進んでいく。

「その後、お仕事はいかがですか?」

「おかげさまでずいぶん、楽になりました」

またイベントが動き出し少しずつ忙しくなっていっているが、この分ならイベント直前でもない限り、休日出勤や夜遅くまで残業したりしないで済みそうだ。

「それに、彼女に優しくなれたのでよかったです」

ずっと、余裕がないせいで加古川さんに対して当たりがきつくなっているんじゃないかと、気にしていた。
彼女だって仕方ないのに、不満が態度に出ているんじゃないか。
気にはしていたが、忙しい私はそこまで気を回せなかった。
でも、余裕ができて、彼女に対して寛容になれた気がする。

「それはよかったですね」

「はい」

あんな私の悩みを聞いても、紘希も会長も私を責めなかった。
それだけで、この会社に入ってよかったと思ったものだ。

「祖父ちゃん、純華を気に入ってたみたいでよかったな」

「そうだね」

会長は秘書が迎えに来たので、紘希とふたりで会社に戻る。

「これで祖父ちゃんの許可は出たも同然だし、早くうちの親に純華を紹介したいなー」

「そう、だね」

会長はやはり、私の正体に全然気づいていなかった。
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