結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
なぜそんな人間の一族の経営する会社に入ったのかって、弱みを握って潰してやるつもりだったのだ。
しかし会社自体はホワイトで、居心地がよくて弱みを握るどころか発展に貢献しているくらいだ。
どうも、人でなしは鏑木親子くらいらしく、グループ内でもガン扱いされていた。

しかし矢崎くんはそんな人間の甥なのだ。
彼はアイツとは違うし、彼自身アイツを毛嫌いしているみたいなのはよかったが、それでも感情では割り切れない。

「ああーっ……」

ずるずると浴槽に沈んでいく。
なんで私は矢崎くんと結婚してしまったんだろう?
いくら結婚マウントを取られてくさくさしていたからって、早まりすぎでは?
ほんの一時間ほど前の私を、叱りつけたい自分だ。

「ううーっ……」

うだうだしていたせいで長湯してしまい、のぼせそうだ。
そろそろ上がろう。

「お先、ありがとー」

「じゃあ俺も入ってくるかな」

私と入れ違いで矢崎くんがリビングを出ていく。
だらしなくソファーにごろんと寝転んだら、テーブルの下に置いてあったレジ袋が目に入った。
すでにしまってあるようだったが、あんなものを買うほど矢崎くんは楽しみにしていたのだ。
けれど今の私にそんな気分はどこにもない。
ただ、彼と結婚してしまった後悔だけが私を支配していた。
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