結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
第二章 それまでは夫婦でいさせて
起きたらすでに矢崎くんはいなかった。
リビングへ行くと、お味噌汁のいい匂いがする。

「おはよう、もう起きたのか。
せっかくおはようのキスで起こしてやろうと思ってたのになー」

起きてきた私に気づき、彼が残念そうに笑う。
おはようのキスとやらは避けたいので、自力で起きてよかった。

「もうできるから、さっさと顔洗ってこーい」

ワイシャツを腕まくり、黒エプロン姿でキッチンに立つ矢崎くんは悔しいが絵になる。
声をかけられて、見惚れていた自分に気づいた。

「……うん」

逃げるように洗面所へ行き、顔を洗う。
起きたら旦那様が朝食を作ってくれているなんて、最高のシチュエーションだとは思う。
でも、彼は私にとって結婚してはいけない相手、で。

「準備できたんなら食べようぜ」

「……うん」

ご飯をよそい、ダイニングテーブルに着いた私の前に矢崎くんが置いてくれる。
豆腐とワカメのお味噌汁にご飯、鮭とほうれん草のおひたしに、切り干し大根の煮物。
まるで旅館の朝ごはんのようで、驚いた。

「料理、できたんだ?」

「ん?
ああ。
俺は味噌汁作って鮭焼いただけだけどな。
あとは家政婦さんの作り置き」

「……そうなんだ」

照れたように人差し指で矢崎くんが頬を掻く。
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