結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
母の質問に、矢崎くんよりも私のほうが緊張した。
この先を聞くのが怖くて、逃げ出したいくらいだ。
「祖父が今勤めている会社の会長をしておりまして。
その後を継ぐためにこの会社に入りました」
「……そう」
母の声は落胆の色が濃い。
きっとこの答えを聞くまでは、矢崎くんにかなりの好印象を抱いていたのだろう。
でも、彼の正体を知ってしまったから。
「祖父の七光りっていいわね」
たっぷりの皮肉を込めて母が言う。
「違うの!
矢崎くんはそうやって言われるのが嫌で、普通の一般社員として扱ってほしくて、会長との関係を隠して働いているの!」
思わず、彼を庇っていた。
それにそうやって言われるのを彼が嫌っているって、もう理解している。
「真面目だし、アイツとは違うんだよ」
「でも、アイツと血が繋がっているんでしょう?」
苦しげに母の顔が歪む。
いまだに母も、あの件で苦しんでいる。
だからこそ、矢崎くんとの結婚を迷ったのもあった。
「あの。
……アイツ、って?」
話に置いてけぼりを喰らっていた矢崎くんが、控えめに聞いてくる。
「あー……。
鏑木社長の、こと」
言いにくい、しかし答えないわけにもいかず、その名前を口にした。
「アイツとなにかあったのか」
この先を聞くのが怖くて、逃げ出したいくらいだ。
「祖父が今勤めている会社の会長をしておりまして。
その後を継ぐためにこの会社に入りました」
「……そう」
母の声は落胆の色が濃い。
きっとこの答えを聞くまでは、矢崎くんにかなりの好印象を抱いていたのだろう。
でも、彼の正体を知ってしまったから。
「祖父の七光りっていいわね」
たっぷりの皮肉を込めて母が言う。
「違うの!
矢崎くんはそうやって言われるのが嫌で、普通の一般社員として扱ってほしくて、会長との関係を隠して働いているの!」
思わず、彼を庇っていた。
それにそうやって言われるのを彼が嫌っているって、もう理解している。
「真面目だし、アイツとは違うんだよ」
「でも、アイツと血が繋がっているんでしょう?」
苦しげに母の顔が歪む。
いまだに母も、あの件で苦しんでいる。
だからこそ、矢崎くんとの結婚を迷ったのもあった。
「あの。
……アイツ、って?」
話に置いてけぼりを喰らっていた矢崎くんが、控えめに聞いてくる。
「あー……。
鏑木社長の、こと」
言いにくい、しかし答えないわけにもいかず、その名前を口にした。
「アイツとなにかあったのか」