結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「……アイツと、なにがあった?」

「え?」

真っ直ぐ前を見たまま運転している矢崎くんの顔を、思わず見ていた。

「さっきは聞けそうな雰囲気じゃないから、聞かなかった。
でも、やっぱり知りたい」

これは今後、彼の弱点になる話なのだ。
話さなければいけないのはわかっている。
それでも。

「ごめん。
今は言えない」

「〝今は〟ってことは、いつか話してくれるんだよな?」

「……そう、だね」

誤魔化すように言い、窓に肘をついて流れていく景色を見る。
……ごめん。
これは矢崎くんにも絶対に言えない。
そのときが来たら、私は黙ってあなたの元を去るよ。
それまでは、私と夫婦でいてください……。
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