結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「言っただろ?
確かに祖父ちゃんはうちの会社の会長だけど、俺んちはちょっとだけ裕福な普通の家庭なの。
純華んちと大差ないよ」

そうなんだろうか。
ついつい、部屋の中を見渡してしまう。

「その割にいい部屋に住んでるっていうか……」

「ん?
ここはさ、就職祝いに祖父ちゃんが借りてくれたの。
ただし、出してくれたのは敷金礼金だけ。
このくらいの部屋が維持できなきゃ、後を継ぐなんて無理だ、って」

そのときを真似しているのか、矢崎くんが厳しい顔になる。

「ふぉぇー」

推定されるここの家賃で借り続けるなんて、かなり大変そうだ。
意外と苦労しているんだな、なんて思ったものの。

「まあ、一緒に株とか不動産とか譲ってくれたけどな。
給料だけだと無理だし、その辺を運用して稼いで維持してる」

御曹司ならではのチート発動でがっかりした。
でもあとで、六つ年下のアイツの息子――矢崎くんの従弟は同じ条件で、もらった株や不動産を即売却して使い切り、マンションは親に払ってもらっていると知り、見直したのも事実だ。

「今度、駐車場の場所を見に行くか。
宅地OKだったと思うけど、確認しないとな。
純華が気に入ってくれたら、工務店を当たって……」

もう家を建てる気なのか、矢崎くんは計画を練っている。

「あの、さ」

< 50 / 193 >

この作品をシェア

pagetop