結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「そういう、家事は女がやらなきゃっていうのはいらない。
俺はなんだってするよ?
家事も、子育ても。
子供を産むのは申し訳ないけど、純華にやってもらわないといけないけど」

「でも……」

そんなんで、彼の奥さんだといえるんだろうか。
それにやってもらうのは申し訳ないわけで。

「でも、じゃない。
純華だって働いてるんだ、どっちかの負担になったらおかしいだろ。
それにうちは家政婦さんに入ってもらってるから、やる家事は少ないし」

有無を言わせないようにじっと、レンズ越しに矢崎くんが私を見つめる。

「……そう、だね」

確かにどちらかが一方的に家事を負担するのは間違っている。
それでも。

「でも、私だって矢崎くんのお世話したいんだもん……」

うるうると目を潤ませて彼を上目遣いで見上げる。
しばらく見つめあったあと、矢崎くんはその場にへなへなと力なく座り込んだ。

「……可愛すぎ。
反則」

反則と言われても、私はなにもしていない。

「朝から押し倒したくなっちゃうんですけど」

「え?」

彼の手が私の肩を押し、簡単にころんとベッドに転がっていた。

「純華が悪いんだからな」

「えっ?
は?」

戸惑っている私を無視し、眼鏡を外して矢崎くんが覆い被さってくる。
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