結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「俺が、純華のファーストキスの相手?」

「そーなるね」

なにをそんなに驚いているんだろうって、二十八にもなってファーストキスすらまだとか驚くか。

「俺が純華のハジメテの男!」

「えっ、うわっ!」

せっかく起き上がったのに勢いよく抱きつかれ、またベッドに倒れた。

「もー、こんなに嬉しいこと、あっていいのか?」

嬉しくって堪らないのか、矢崎くんはにこにこしっぱなしだ。

「純華、一生大事にする」

むちゅーっと盛大に口付けをし、ようやく彼は離れてくれた。

「顔洗ってこい?
もう朝食、できてるから」

「あー、うん」

彼が寝室を出ていきひとりになった途端、爆発でもしたかのように一気に顔が熱くなった。
いや、ばふんて音がした気がするから、本当に爆発したのかもしれない。

「……そっか。
私のファーストキスの相手は、矢崎くんなんだ……」

もう何度か唇は重ねたが、いろいろいっぱいいっぱいで意識していなかった。
改めて認識すると、嬉しさと恥ずかしさで満たされる。

「うーっ、あーっ」

このむず痒い気持ちに耐えられず、枕で顔を押さえてベッドの上をごろごろ転がっていたけれど。

「純華ー、早くしないと遅刻するぞー」

矢崎くんから声をかけられ、慌てて起き上がった。

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