結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
しかも彼はいい感じに相槌を打つだけして、私を気持ちよく愚痴らせてくれる。
そういうところはいつも、助かっていた。

「だいたい、私だって子供関連のイベントも多いから本を読んで勉強してるし、友達に頼んで実地経験もさせてもらってるのにさー」

ぐいっとレモン酎ハイを呷り、酒臭い息を吐く。
数少ない友人のひとりには子供がいて、ときどき子守をさせてもらっている。
私は仕事の役に立ち、彼女は自由時間ができてwin-winの関係だ。
でも、それでは足りないのはわかっている。
それでも。

「朝は朝でお母さんから結婚勧められるし。
ほんと今日、最悪。
ねえ、結婚して子供がいたら、そんなに偉いの?」

テーブルの上に片腕をのせ、ぐいっと矢崎くんのほうへと身体を乗り出す。

「俺だってまだ結婚もしてないし、子供もいないからわかんないな」

困ったように笑い、彼はグラスを口に運んだ。

「まあ、ひとりで生きていくだけでも大変なのに、子供も育ててるんだから偉いのはわかるんだけどさー」

グラスを持ち上げたが空になっているのに気づき、注文端末を操作した。

「矢崎くんは?」

「じゃあ、俺もハイボール追加。
あと、唐揚げも頼んでいいか」

「了解」

自分の分と一緒に彼の分も頼む。
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