結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「確かにスロープが端の一カ所にしかなく、ベビーカーや車椅子の方には不便かと位置を見直し、増やしました。
さらに設計担当と相談し、若干ではありますが通路もできる限り広くしました。
これで幾分かは改善したかと思うんですが……」

ちらりと加古川さんに視線を向ける。

「そうですね、まあいいんじゃないですか」

自分は指摘だけしてなにも案を出してこなかったのに、なんで上から目線なのかわからないが、納得してくれたみたいなのでよしとしよう。
それに今日は、焼き肉なのだ。
それで全部、許せる。

今日は残業一時間くらいで終わった。
珍しく保育園から電話がかかってこなかったのと、土曜に矢崎くんに手伝ってもらって少し進めておいたおかげだ。
いつもこうだったらいいが、子供の体調や怪我ばかりはどうにもならない。
というかなんで、私が人様の子供の体調なんかに振り回されなければいけないのだろう?
謎だ。

終わったと連絡を入れたらちょうど矢崎くんも終わったところだったみたいで、ロビーで落ちあう。

「今日は早かったな」

「いつもこうだといいのにねー」

一緒に会社を出て、地下鉄で二駅先にある百貨店に向かう。
そこでタイピンを受け取った。

「またのご依頼をお待ちしております」

帰っていく私たちに丁寧に店員が頭を下げる。
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