結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「もうできるからいったん片付けろー」
「はーい」
慌ててパソコンをスリープにし、書類一式と一緒にリビングのテーブルへと移動させた。
「ほい、おまたせ」
彼がテーブルの上に並べていったのは、フレンチトースト?
生クリームとフルーツがたっぷりのせてある。
「どうしたの?」
いつも、朝食は和食なのだ。
なのに急に、こんなお洒落なのが出てきて戸惑った。
「んー、休みの日くらいいいんじゃない?
朝早くから仕事してる純華にご褒美」
「……あ、ありがとう」
眼鏡の奥で矢崎くんが器用に片目をつぶって見せ、ほのかに頬が熱くなった。
「何時からやってたんだ?」
「んー、六時から?」
時刻はそろそろ九時になろうとしている。
おかげでかなり、進んだけれど。
「そんなに早くからやらないと終わらないほど、ヤバいのか?」
ナイフとフォークを止め、心配そうに矢崎くんが私の顔をのぞき込む。
「あ、いや。
午前中で済ませられたら、午後から出かけられるかなー、って。
矢崎くん、指環見に行きたいとか、不動産屋さんに行きたいとか言ってたから……」
後半はなんか恥ずかしくて、ごにょごにょと口の中にとどまってしまう。
「可愛いなー、純華は」
ふにゃんと嬉しそうに、矢崎くんが笑う。