結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「お待ちしておりました」

今日も担当さんが出てきて、別室へと案内してくれる。

「なんか、買うの?」

彼が外商さんに頼んでよく買い物をしているのは、もう学習していた。
今日もそうなのかな。

「今日は純華の化粧品、買おうと思って」

「え?」

「純華、昨日、化粧品買おうとしてただろ?
でも、もしかしたら買ってもやり方がわからないんじゃないかなー、って。
だから買うついでに、教えてもらえばいいよなって思ったんだけど」

照れくさそうに頬を掻く彼の顔を、まじまじと見ていた。
なんで私すら想定していなかった未来が、彼には見えているんだろう。
言われてみれば彼の言うとおり、買ったものの持て余していた可能性が高い。
いや、売り場に行った時点でどれを買っていいのかわからなくて、途方に暮れていた可能性すらある。

「……余計なお世話、だったか?」

少し自信なさげに、矢崎くんが上目遣いで私をうかがう。
その瞬間。

――心臓に、ずきゅんと矢が刺さった。

「えっ、いや、……ありがとう」

なんだか心臓が飛び出そうで口を押さえる。
それくらい私の心臓は激しく鼓動していた。

……え、あんなに可愛いの、反則なんですケド。

なんというかいつも自信満々な彼とのギャップ萌え?
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