結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「そう。
純華は元が可愛いから、化粧したらもっと可愛くなる」

眼鏡の下で目を細め、矢崎くんが眩しそうに見ていて頬が熱くなっていく。

「……元が可愛いのはないよ」

耐えられなくなって、新しく淹れてくれたコーヒーを飲みながらごにょごにょと呟いた。

「うんにゃ。
純華は元から可愛いよ」

私の額に落ちかかる髪を払い、顔をのぞき込んだ矢崎くんがにっこりと微笑む。

「えっ、あっ」

その笑顔があまりにも眩しすぎて、つま先から少しずつ熱が昇ってくる。
それは次第に速くなり、膝を過ぎたあたりから一気に駆け上がってきた。

「ああーっ!」

「えっ、純華?」

反動的に私が立ち上がり、矢崎くんは困惑している。

「あっ、いや、出るときに寝室の電気、切ってきたか気になって」

自分の行動が不審すぎてだらだらと変な汗を掻く。
適当に誤魔化し、慌ててソファーに座り直した。

「人がいないと勝手に切れるようになってるから、大丈夫だが?」

「あ、あ、そう……」

私は矢崎くんにどきどきしてこんなに動揺しているのに、彼は平静で憎らしい。
私ももっと、彼をどきどきさせたいな。
ま、それは今後の課題ってことで。
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