結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「いや、しない、しないよ。
でも、酔ってるときってちょっと、童心に返るっていうか。
……だから。
イケそうな気はするけど、実行するほどバカじゃないって」
私に不審の目を向けられ、慌てて矢崎くんが否定してくる。
彼でもそんなことを考えるのだとちょっと意外だった。
でも本当に、実行はしないでいただきたい。
「まあ、怪我しちゃったもんは仕方ないけどさー。
人手が足りないんだよ……」
今回、うちの課では同日にイベントをふたつ抱えていた。
なんでそうなったのかって、もうひとつのイベントにトラブルが発生して延期になり、偶然重なってしまったのだ。
当然、課内の人間はふたつに分けられるわけで、いつもよりも人数が少ない。
なのに階段自転車下りなんてバカなことをやって足を折り、一人がリタイヤしてしまったのだ。
「うー、あー」
唸るばっかりでいい考えは出てこないし、食事も当然進まない。
「大変だな」
矢崎くんは完全に他人事だが、事実そうなんだから仕方ない。
「そうなんだよ」
それでなくても、もうひとつ重大な懸念案件を抱えているのだ。
これ以上、私を悩ませないでほしかった。
「じゃ、俺が手伝ってやろうか」
「は?」
なにを言っているのかわからなくて、まじまじと矢崎くんの顔を見る。