結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「いつもお世話になってるしな。
うちから数人、若いのも出してやるよ」
「え、ほんとに?」
それは渡りに船だが、本当にいいんだろうか。
「でも、上司の許可とか大丈夫なの?」
いくら彼がよくても、上の許可が取れなければ無理だ。
「んー、部長は俺のいうこと、なんでも許可してくれるぞ。
だから大丈夫だ」
「……は?」
なんでもないようにさらりと彼は言っているが、それはいくらなんでも上司としてはダメなのでは?
「え、矢崎くんが跡取りだと知ってて、好き勝手やらしてくれてる……」
「とかあるわけないだろ」
言い切らないうちに被せるように彼が否定してくる。
「デスヨネー」
あまりに自分の失礼具合に恐縮してしまい、もそもそとハンバーグを口へ運んだ。
それに矢崎くんが跡取りなのは身内しか知らないと言っていたし、営業部長は会長一族の人間ではないはずだ。
「それだけ俺が頑張って、信頼を勝ち取ったの。
だから部長はなんでも許可してくれる。
わかった?」
淡々と彼は語っているが、これは絶対に怒っている。
自分の軽率な発言を深く反省した。
矢崎くんは人一倍頑張っている。
それは近くにいる、私が一番わかっているはずなのに。
なにも考えず、あんなことを言ってしまった自分が嫌になる。