結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
「わかった。
ごめん」

「いい。
それに純華は自分が悪いと思ったらすぐに謝るから、俺は好きだよ」

私と視線をあわせ、眼鏡の下で目尻を下げて彼がにっこりと笑う。
その顔に頬が熱を持っていった。

「ありがとう。
でも、本当に酷いことを言ったと思う。
ごめん」

「だから、そんなに謝らなくていいって」

「でも……」

私だったら自分の努力を否定するようなことを言われ、絶対に傷ついていた。
矢崎くんだって傷つくはずだ。
かといって一度口から出てしまったものを、取り消しはできないが。

「んー、そこまで言うならあとで、お詫びしてもらおうかなー?」

レンズの向こうできゅるんと、なにか企んでいるように矢崎くんの瞳が光る。

「う、うん」

それを見ながら、これも軽率な行為だったんじゃないかと後悔していた。

「それで。
きっと、部長から許可出るから心配しなくていい。
俺も手伝うし、うちから若いの何人か出すよ。
雑用係くらいできるだろ」

「うん、ありがとう」

素直にお礼を言う。
人手が増えるのは大助かりだ。

「そっちの上にも俺から話を通しとくし。
だから純華はイベントのことだけ考えとけ」

「あいたっ」

身を乗り出してきた彼が、軽く私の額を弾く。
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