【完結】お試しダンジョンの管理人 ~イケメンたちとお仕事がんばってます!~
エートと呼ばれなれていたから、なんだか不思議な感じ。
でも、懐かしくて、心があったかくなる。
みんな、心配してくれてたんだね。
その声にこたえたくて、
音がよく響く風の魔法を城仕(づか)えの魔法使いにかけてもらう。
「国民の皆様、たいへん心配をかけてしまい、申し訳ありませんでした」
わあっと再び上がる、歓声。
「わたくしは、愛なき結婚をしいられていました。
この国の、後継ぎのために、と……。
それで、逃げ出してしまったのです。
国民の皆様には、深くお詫び申し上げます」
今度は、会場がしん、と静まり返った。
みんな、じっと耳をかたむけてくれている。
「城の外の世界で、わたくしはいろいろな方と知り合いました。
その方たちは、自分の仕事に誇りを持ち、
とても生き生きと仕事をしていました。
わたくしは、思ったのです。
このまま愛のない結婚をして、心を失った時、
わたくしは自分の王族としての仕事に誇りをもてなくなる、と。
生きた人形のまま、生涯を終えるのは、あまりにもくやしい」