【完結】お試しダンジョンの管理人 ~イケメンたちとお仕事がんばってます!~

 エートと呼ばれなれていたから、なんだか不思議な感じ。

 でも、懐かしくて、心があったかくなる。

 みんな、心配してくれてたんだね。

 その声にこたえたくて、
 音がよく響く風の魔法を城仕(づか)えの魔法使いにかけてもらう。



「国民の皆様、たいへん心配をかけてしまい、申し訳ありませんでした」



 わあっと再び上がる、歓声。



「わたくしは、愛なき結婚をしいられていました。
この国の、後継ぎのために、と……。
それで、逃げ出してしまったのです。
国民の皆様には、深くお詫び申し上げます」



 今度は、会場がしん、と静まり返った。

 みんな、じっと耳をかたむけてくれている。



「城の外の世界で、わたくしはいろいろな方と知り合いました。
その方たちは、自分の仕事に誇りを持ち、
とても生き生きと仕事をしていました。

わたくしは、思ったのです。
このまま愛のない結婚をして、心を失った時、
わたくしは自分の王族としての仕事に誇りをもてなくなる、と。
生きた人形のまま、生涯を終えるのは、あまりにもくやしい」
< 240 / 303 >

この作品をシェア

pagetop