【完結】お試しダンジョンの管理人 ~イケメンたちとお仕事がんばってます!~

 そうでもしなければ、
 観客たちは氷漬けになってしまっていただろう。

 それほど、見境のない、おそろしい攻撃だった。

 氷の息が効かないと分かると、ケルベロスは大きくほえた。

 すると、風が渦(うず)を巻き、こちらへ向かってきた。

 わたしたちのいるリング上の石床をはがし、
 傷つけ、渦は魔王へとせまってくる。

 しかし、魔王は腕をのばすと、その渦をつかむしぐさをしてみせた。

 それだけで、渦はかき消えてしまった。

 あまりの魔王の強さに、会場中がしんと静まる。

 ぴりぴりとした緊張感。

 それに耐えられなくなったのか、
 とうとうケルベロスは、己の身ひとつで突っ込んできた。



「危ない!」



 わたしが声を上げるも、魔王は動じない。

 その腕をケルベロスに噛まれても、
 うめき声ひとつあげなかった。

 噛まれている方とは逆の手を、
 すっとケルベロスの額にのせる。
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