あやかしの甘い束縛
私は悩んだ末に夢を諦めて、庄ちゃんと結婚する道を選んだのだ。

夢は諦めたけど、好きな人との結婚にその時の私は幸せだった。

しかし、結婚生活はそう甘くはなかった。

旅館の仕事は朝から晩まで休む暇はない。

しかも、義母である女将は、結婚当初から嫁である私に風当たりが強かった。

不慣れな私にあからさまに嫌味を言ってくるのはまだましだ。

他のスタッフに陰で私の悪口を言いふらしたり、失敗をした日には私だけ賄いがないこともあった。
慣れない生活で熱を出した時も、「そんなに仮病を使ってまで休みたいのかしら?」と嫌味を言われたこともあった。
少しでも言い返すものなら、その日からいくら話しかけても無視が始まるのだ。

どうして女将は私にあんなに冷たいのだろう...?

悩んで辛くて悲しくて、ジリジリと精神的に追い詰められていく。

耐え切れなくて、庄ちゃんにも相談するが、“美琴の思い込み過ぎだ”と取り合ってはくれない。
それどころか、“美琴は甘え過ぎだ”と責められてしまう。

その時、この家には、私の味方は誰もいないことを悟ったのだ。
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