せっかく侍女になったのに、奉公先が元婚約者(執着系次期公爵)ってどういうことですか2 ~断罪ルートを全力回避したい私の溺愛事情~
新ルート突入!?
記憶を取り戻し、悪役令嬢をやめて侍女になった私は――変わらず、シュトランツ公爵家で侍女ライフを送っていた。
「ユリアーナ、ただいま」
「……おかえりなさいませ。クラウス様」
そう、元婚約者、クラウス・シュトランツの専属侍女として。
クラウス様は、私が前世で読んだ小説『聖なる恋の魔法にかけられて』のヒーローである。そして私が転生したのは、その小説の世界だった。しかもクラウス様の婚約者&ヒロインをいじめる悪役令嬢のユリアーナ・エーデルに転生していたのだ。
ユリアーナは小説の最後、ヒロインであるリーゼとクラウス様を手にかけようとし、失敗した末処刑される。
私はそんな残酷な運命から逃れるために、まずクラウス様との婚約を解消し、舞台となる魔法学園も退学した。そうしていろいろ考えて、誰かの役に立ちたいという思いから、ただの貴族令嬢から侍女に転身したのである。
これで小説の主要キャラたちから距離を置き、まったく関係のない世界で悠々自適に生きていけると思ったのも束の間――どういうわけか、クラウス様が私を侍女として公爵家に迎え入れると言い出した。
そこからもリーゼではなく私を好きだと言い始め……いろいろあって、ついに専属侍女にされてしまった。つまり、小説とはまったく異なる展開を辿っている真っ最中だ。
……小説のエンディングは、クラウス様が学園を卒業しリーゼと結ばれるまで。展開は違えど、クラウス様が卒業するまではいつ破滅が訪れるかわからない。
そのため、私は今もなお、破滅に怯え、破滅を回避するために奮闘している――。
「ユリアーナ、少し大事な話があるんだ」
学園から帰ったばかりのクラウス様にお茶を用意していると、いつもはすぐに脱ぐブレザーを着たまま、クラウス様が言った。
「大事な話? なんですか?」
「実は……」
間を取られると、緊張感が増すのでやめてほしい。
なにを言われるのか、私はドキドキしながら次の言葉を待つ。
「来週から隣国アトリアの魔法学園に、短期留学することになったんだ!」
「……え、えぇ!?」
「正式に決まったようでね。突然だけど、そういうことだから」
「いや、突然すぎてちょっとよく意味が……」
言われるのも突然だったけど、来週ってすぐじゃない!
私が呆気に取られているのをよそに、クラウス様はばさっとブレザーを脱ぐと椅子に座って優雅にお茶を飲み始めた。
「はぁ。ユリアーナが淹れるお茶は、世界でいちばん美味いな」
何十回と聞いたその言葉が、今日だけはよく頭に入ってこなかった。動きも思考も停止している私を見て、クラウス様が「どうしたんだ?」と笑う。
「どうしたっていうか、もっとちゃんと説明してほしいのですが……」
いつどこに行くのかはわかった。でも、どういう経緯で、いつ戻ってくるのか。その間、私の仕事はどうなるのか。他はわからないことだらけである。
それにクラウス様が留学するなんて、当然小説ではありえなかった。ここまできたらもうなにが起きても仕方がないが、原作とかけ離れすぎて逆に大丈夫なのかと心配になるくらいだ。
「ああ、留学のことか? 少し前から、そういった話は出ていたんだ。成績優秀な俺に、是非一度アトリアの学園に来てほしいって話がね。だけど生徒会の仕事もあるし……卒業間近で留学するのもなって悩んだんだが……」
悩んだ末、人生経験のやめにも三か月だけ行くことを決めた、とクラウス様は言った。
「俺の代わりに、リーゼがしばらくは会長を務めてくれることになったんだ」
「そうですか。リーゼ様なら安心ですね」
「マシューにもサポートを頼んでいるしな」
――それじゃあ、来週からクラウス様は。
留学の話をやっと現実的に捉えることができたと同時に、なんだか胸がもやっとしたが、私は気づかないふりをして、黙ってお茶のおかわりを注いだ。
「ユリアーナ、ただいま」
「……おかえりなさいませ。クラウス様」
そう、元婚約者、クラウス・シュトランツの専属侍女として。
クラウス様は、私が前世で読んだ小説『聖なる恋の魔法にかけられて』のヒーローである。そして私が転生したのは、その小説の世界だった。しかもクラウス様の婚約者&ヒロインをいじめる悪役令嬢のユリアーナ・エーデルに転生していたのだ。
ユリアーナは小説の最後、ヒロインであるリーゼとクラウス様を手にかけようとし、失敗した末処刑される。
私はそんな残酷な運命から逃れるために、まずクラウス様との婚約を解消し、舞台となる魔法学園も退学した。そうしていろいろ考えて、誰かの役に立ちたいという思いから、ただの貴族令嬢から侍女に転身したのである。
これで小説の主要キャラたちから距離を置き、まったく関係のない世界で悠々自適に生きていけると思ったのも束の間――どういうわけか、クラウス様が私を侍女として公爵家に迎え入れると言い出した。
そこからもリーゼではなく私を好きだと言い始め……いろいろあって、ついに専属侍女にされてしまった。つまり、小説とはまったく異なる展開を辿っている真っ最中だ。
……小説のエンディングは、クラウス様が学園を卒業しリーゼと結ばれるまで。展開は違えど、クラウス様が卒業するまではいつ破滅が訪れるかわからない。
そのため、私は今もなお、破滅に怯え、破滅を回避するために奮闘している――。
「ユリアーナ、少し大事な話があるんだ」
学園から帰ったばかりのクラウス様にお茶を用意していると、いつもはすぐに脱ぐブレザーを着たまま、クラウス様が言った。
「大事な話? なんですか?」
「実は……」
間を取られると、緊張感が増すのでやめてほしい。
なにを言われるのか、私はドキドキしながら次の言葉を待つ。
「来週から隣国アトリアの魔法学園に、短期留学することになったんだ!」
「……え、えぇ!?」
「正式に決まったようでね。突然だけど、そういうことだから」
「いや、突然すぎてちょっとよく意味が……」
言われるのも突然だったけど、来週ってすぐじゃない!
私が呆気に取られているのをよそに、クラウス様はばさっとブレザーを脱ぐと椅子に座って優雅にお茶を飲み始めた。
「はぁ。ユリアーナが淹れるお茶は、世界でいちばん美味いな」
何十回と聞いたその言葉が、今日だけはよく頭に入ってこなかった。動きも思考も停止している私を見て、クラウス様が「どうしたんだ?」と笑う。
「どうしたっていうか、もっとちゃんと説明してほしいのですが……」
いつどこに行くのかはわかった。でも、どういう経緯で、いつ戻ってくるのか。その間、私の仕事はどうなるのか。他はわからないことだらけである。
それにクラウス様が留学するなんて、当然小説ではありえなかった。ここまできたらもうなにが起きても仕方がないが、原作とかけ離れすぎて逆に大丈夫なのかと心配になるくらいだ。
「ああ、留学のことか? 少し前から、そういった話は出ていたんだ。成績優秀な俺に、是非一度アトリアの学園に来てほしいって話がね。だけど生徒会の仕事もあるし……卒業間近で留学するのもなって悩んだんだが……」
悩んだ末、人生経験のやめにも三か月だけ行くことを決めた、とクラウス様は言った。
「俺の代わりに、リーゼがしばらくは会長を務めてくれることになったんだ」
「そうですか。リーゼ様なら安心ですね」
「マシューにもサポートを頼んでいるしな」
――それじゃあ、来週からクラウス様は。
留学の話をやっと現実的に捉えることができたと同時に、なんだか胸がもやっとしたが、私は気づかないふりをして、黙ってお茶のおかわりを注いだ。
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