せっかく侍女になったのに、奉公先が元婚約者(執着系次期公爵)ってどういうことですか2 ~断罪ルートを全力回避したい私の溺愛事情~
「ク、クラウス様……?」
「やっと人目のないところでふたりきりになれたな。ユリアーナ」
「な、なに言って」
「ずっと君に触れたくてたまらなかった。俺にしては、よく我慢したほうだと思わないか?」
ぎゅっと腕の力を強めて、クラウス様は私の耳元で囁く。吐息がかかってくすぐったい。
「そんなの知りません……! お茶を淹れられないので離してくださいっ……!」
「お茶なんて後でいい。今はユリアーナを堪能したいんだ」
「私、堪能されるような存在ではないんですけど……」
クラウス様は私の言うことなど聞かず、そのまま私の髪に顔を埋める。
「ああ、いい香りだ。君の髪はいつも美しいな」
そう言って、クラウス様は私の赤く長い髪にするりと指を通す。私の髪が綺麗だというならば、それはシュトランツ家が使っているシャンプーが上等品だからではなかろうか。
「ほら、美しい顔も近くで見せてくれ」
「ひゃっ!」
クラウス様が、ぐるりと私の身体を回転させる。クラウス様と至近距離で見つめ合う形になり、私おもわず逃げたくなったが、もう後ろに逃げられるスペースがない。
「クラウス様、ち、近いです」
「昔は君のほうからこうやって迫ってきたじゃないか」
「またそうやって昔の話を持ち出して……! もうあの頃の私じゃないんですっ!」
「知ってる」
慌てる私を見て、クラウス様は楽しそうに笑っている。私がこうやって反応したら、クラウス様の思うツボなのはわかっているのに、どうしても平然としていられない。記憶が戻ったばかりの頃だったら、まだ冷たくあしらえたのに……。
「なぁユリアーナ。三か月間ふたりで暮らせるなんて、幸せすぎると思わないか?」
「なに言ってるんですか。侍女には侍女用の部屋が設けられているんです! べつにクラウス様と同じ部屋で暮らすわけじゃありませんから!」
「じゃあ、そういうわけにしようか。ユリアーナもこの部屋で三か月過ごせばいい。これは主人の命令だ」
「いくらクラウス様の頼みでも、それは聞けません!」
調子のいいときだけ、主の権限を使うのだから困ったものだ。
クラウス様と同じ部屋で毎晩寝泊まりするなんて、私の気が休む時間がなくなってしまう。断固拒否だ。
「それより、早く離れてください」
「いくらユリアーナの頼みでも、それは聞けないな」
私と同じ返しをして、クラウス様は私の腰をぐいっと引き寄せる。後ろから少しでも押されれば、唇がぶつかりそうな距離までクラウス様の顔が近くにきて、どきりと心臓が跳ねた。
「……ユリアーナ」
熱のこもった瞳で見つめられ、逸らしたいのに逸らせない。
「やっと人目のないところでふたりきりになれたな。ユリアーナ」
「な、なに言って」
「ずっと君に触れたくてたまらなかった。俺にしては、よく我慢したほうだと思わないか?」
ぎゅっと腕の力を強めて、クラウス様は私の耳元で囁く。吐息がかかってくすぐったい。
「そんなの知りません……! お茶を淹れられないので離してくださいっ……!」
「お茶なんて後でいい。今はユリアーナを堪能したいんだ」
「私、堪能されるような存在ではないんですけど……」
クラウス様は私の言うことなど聞かず、そのまま私の髪に顔を埋める。
「ああ、いい香りだ。君の髪はいつも美しいな」
そう言って、クラウス様は私の赤く長い髪にするりと指を通す。私の髪が綺麗だというならば、それはシュトランツ家が使っているシャンプーが上等品だからではなかろうか。
「ほら、美しい顔も近くで見せてくれ」
「ひゃっ!」
クラウス様が、ぐるりと私の身体を回転させる。クラウス様と至近距離で見つめ合う形になり、私おもわず逃げたくなったが、もう後ろに逃げられるスペースがない。
「クラウス様、ち、近いです」
「昔は君のほうからこうやって迫ってきたじゃないか」
「またそうやって昔の話を持ち出して……! もうあの頃の私じゃないんですっ!」
「知ってる」
慌てる私を見て、クラウス様は楽しそうに笑っている。私がこうやって反応したら、クラウス様の思うツボなのはわかっているのに、どうしても平然としていられない。記憶が戻ったばかりの頃だったら、まだ冷たくあしらえたのに……。
「なぁユリアーナ。三か月間ふたりで暮らせるなんて、幸せすぎると思わないか?」
「なに言ってるんですか。侍女には侍女用の部屋が設けられているんです! べつにクラウス様と同じ部屋で暮らすわけじゃありませんから!」
「じゃあ、そういうわけにしようか。ユリアーナもこの部屋で三か月過ごせばいい。これは主人の命令だ」
「いくらクラウス様の頼みでも、それは聞けません!」
調子のいいときだけ、主の権限を使うのだから困ったものだ。
クラウス様と同じ部屋で毎晩寝泊まりするなんて、私の気が休む時間がなくなってしまう。断固拒否だ。
「それより、早く離れてください」
「いくらユリアーナの頼みでも、それは聞けないな」
私と同じ返しをして、クラウス様は私の腰をぐいっと引き寄せる。後ろから少しでも押されれば、唇がぶつかりそうな距離までクラウス様の顔が近くにきて、どきりと心臓が跳ねた。
「……ユリアーナ」
熱のこもった瞳で見つめられ、逸らしたいのに逸らせない。