せっかく侍女になったのに、奉公先が元婚約者(執着系次期公爵)ってどういうことですか2 ~断罪ルートを全力回避したい私の溺愛事情~
次の日。
アトリア側が用意してくれた制服に袖を通し、クラウス様は学園へと向かった。
青紫と赤を基調としたアトリアの制服はおしゃれで、クラウス様も気に入ったみたい。……あまり態度には出してなかったけど、顔を見たらすぐにわかった。
侍女は基本的に、学園へは同行しない。
同行してよいのは休憩時間や、課外授業、長時間に及ぶ屋外実習などの特別な場合のみに限られている。どうしても同行させたい場合は、学園側に理由を書いて申請して、許可が下りればオーケーされる仕組みのようだ。
部屋を軽く清掃し、自分の朝食の時間を終え、洗濯を済ませ、乾くのを待つ。
以上の作業を終えると、しばらくはなにもすることがない。正直、シュトランツの屋敷にいるときの何倍もラクだ。食事は学園寮自体にシェフがついているし、そのおかげもあって洗い物を手伝うこともない。
「……逆に暇を持て余しちゃうわね」
誰もいない部屋でひとり呟く。
しかし、暇だからといってなにもしないのは、侍女としてどうなのだろうか。きっとここにイーダさんがいたら「やることは自分で見つけなさい!」と、喝を入れられることだろう。その姿が安易に想像ついて、くすりと笑ってしまった。
考えた結果、私は寮を少し探索することにした。
まだ完璧にどこになにがあるかを把握しきれていないし――同じように働く侍女が、ここには何人もいる。
誰かと仲良くなれれば、いろいろと教えてもらえるし、もっと働きやすい環境になる気がする。
そう思い廊下を歩き、曲がり角に差し掛かったそのとき――。
「なにしてんのよ! こののろま!」
誰かの怒声が聞こえ、私は条件反射でサッと壁に身体をくっつけて身を隠した。
その後すぐ、バリーンとなにかが割れた音が聞こえる。
――い、いったいなに!?
事件でも起きたのだろうか。
隠れながらも恐る恐る様子を窺うと、声と音がしたであろう部屋から、マリー様が出てきた。
かなり起こった様子で、大股でずかずかと歩きながら廊下を突き進んでいる。驚くべき光景に、私は何度もぱちくりと瞬をした。
――今の、あのマリー様? ということは、さっきの声も……?
昨日の可愛らしい、語尾が伸び気味な甘ったるい声とは全然違う。それに仕草も表情も、まるで別人のようだった。
アトリア側が用意してくれた制服に袖を通し、クラウス様は学園へと向かった。
青紫と赤を基調としたアトリアの制服はおしゃれで、クラウス様も気に入ったみたい。……あまり態度には出してなかったけど、顔を見たらすぐにわかった。
侍女は基本的に、学園へは同行しない。
同行してよいのは休憩時間や、課外授業、長時間に及ぶ屋外実習などの特別な場合のみに限られている。どうしても同行させたい場合は、学園側に理由を書いて申請して、許可が下りればオーケーされる仕組みのようだ。
部屋を軽く清掃し、自分の朝食の時間を終え、洗濯を済ませ、乾くのを待つ。
以上の作業を終えると、しばらくはなにもすることがない。正直、シュトランツの屋敷にいるときの何倍もラクだ。食事は学園寮自体にシェフがついているし、そのおかげもあって洗い物を手伝うこともない。
「……逆に暇を持て余しちゃうわね」
誰もいない部屋でひとり呟く。
しかし、暇だからといってなにもしないのは、侍女としてどうなのだろうか。きっとここにイーダさんがいたら「やることは自分で見つけなさい!」と、喝を入れられることだろう。その姿が安易に想像ついて、くすりと笑ってしまった。
考えた結果、私は寮を少し探索することにした。
まだ完璧にどこになにがあるかを把握しきれていないし――同じように働く侍女が、ここには何人もいる。
誰かと仲良くなれれば、いろいろと教えてもらえるし、もっと働きやすい環境になる気がする。
そう思い廊下を歩き、曲がり角に差し掛かったそのとき――。
「なにしてんのよ! こののろま!」
誰かの怒声が聞こえ、私は条件反射でサッと壁に身体をくっつけて身を隠した。
その後すぐ、バリーンとなにかが割れた音が聞こえる。
――い、いったいなに!?
事件でも起きたのだろうか。
隠れながらも恐る恐る様子を窺うと、声と音がしたであろう部屋から、マリー様が出てきた。
かなり起こった様子で、大股でずかずかと歩きながら廊下を突き進んでいる。驚くべき光景に、私は何度もぱちくりと瞬をした。
――今の、あのマリー様? ということは、さっきの声も……?
昨日の可愛らしい、語尾が伸び気味な甘ったるい声とは全然違う。それに仕草も表情も、まるで別人のようだった。