せっかく侍女になったのに、奉公先が元婚約者(執着系次期公爵)ってどういうことですか2 ~断罪ルートを全力回避したい私の溺愛事情~
「ちょっと待ってて」
「……?」
私はちりとりごと手に取って、クラーラの前にそれを置くと、手をかざして修復魔法を発動した。これは私が、エルムの大精霊ティハルトからもらった特殊魔法のギフトである。
むやみに発動するのはやめようと思っていたけれど、 そんなことを聞かされては――発動しないわけにはいかないじゃない。
ガラスは光に包まれていく。その光が、目を丸くするクラーラの顔を照らした。
そして光が治まると、無残に散らばっていたガラスは、綺麗なブルーロータスのガラス細工に姿を変えた。
「わぁ……! 元はこんなに綺麗だったのね」
青く輝きを放つガラスは、ため息が漏れるほど美しかった。
「ほら、これで元通り。今度は割れないよう、クラーラの部屋に飾って大事にしてあげて」
私はブルーロータスのガラス細工を、落とさないよう慎重に持ち上げると、テーブルの真ん中にコトンと置いた。
「すごい……! どうして!? ユリアーナ、今のはどうやったの? もしかして、あなたも実は凄腕の魔法使いなんじゃあ……」
「うーん。一応魔法は使えるけど、凄腕とは程遠いというか。……これはね、エルムの精霊から授かったギフト能力なの」
初対面のクラーラにギフトのことを打ち明けるつもりはなかったが、こうやって見られてしまった以上は覚悟の上だった。
それに、最近はこの修復魔法の使い方にも大分慣れてきた。エルムでも前ほど隠さなくなっており、今では屋敷の人たちはほとんど知っている。クラーラは言いふらすような子にも見えないし……大丈夫だろう。
アトリアにもギフトを授ける精霊はいるようだし、ギフトに対する理解はあるはずだ。
「ギフト……!? それじゃあユリアーナは、精霊に見初められた特別な人ってことなのね」
「大袈裟だけど……まぁ、そんな感じかな」
「すごい……! アトリアにもそういった精霊がいるようだけど、みんな会ったことすらないって。ユリアーナなら、アトリアの大精霊にも会えるかも!」
会ってみたい気持ちはある。でも、会ったらどうなるんだろう? 私はもうギフトをもらっいる。ふたつギフトをもらうなんて話は、聞いたことがない。
「ユリアーナ、本当にありがとう。私、あなたのおかげで頑張れそうな気がする」
クラーラは、ガラス細工に負けないくらいの眩しい笑顔で私にそう言った。そこにはもう、つい数十分前まで泣きべそをかいていたクラーラの面影はない。
――ニコル、私、アトリアでも友達ができたわよ!
遠く離れたエルムにいる心配性の親友へ向けて、私は心の中でそう叫んだ。
そうだ。時間があればクラーラにも、刺繍の名前入りハンカチをプレゼントしよう。もし私がいないところで、また涙を流すことがあっても、その涙を優しく拭ってあげられるように。
「……?」
私はちりとりごと手に取って、クラーラの前にそれを置くと、手をかざして修復魔法を発動した。これは私が、エルムの大精霊ティハルトからもらった特殊魔法のギフトである。
むやみに発動するのはやめようと思っていたけれど、 そんなことを聞かされては――発動しないわけにはいかないじゃない。
ガラスは光に包まれていく。その光が、目を丸くするクラーラの顔を照らした。
そして光が治まると、無残に散らばっていたガラスは、綺麗なブルーロータスのガラス細工に姿を変えた。
「わぁ……! 元はこんなに綺麗だったのね」
青く輝きを放つガラスは、ため息が漏れるほど美しかった。
「ほら、これで元通り。今度は割れないよう、クラーラの部屋に飾って大事にしてあげて」
私はブルーロータスのガラス細工を、落とさないよう慎重に持ち上げると、テーブルの真ん中にコトンと置いた。
「すごい……! どうして!? ユリアーナ、今のはどうやったの? もしかして、あなたも実は凄腕の魔法使いなんじゃあ……」
「うーん。一応魔法は使えるけど、凄腕とは程遠いというか。……これはね、エルムの精霊から授かったギフト能力なの」
初対面のクラーラにギフトのことを打ち明けるつもりはなかったが、こうやって見られてしまった以上は覚悟の上だった。
それに、最近はこの修復魔法の使い方にも大分慣れてきた。エルムでも前ほど隠さなくなっており、今では屋敷の人たちはほとんど知っている。クラーラは言いふらすような子にも見えないし……大丈夫だろう。
アトリアにもギフトを授ける精霊はいるようだし、ギフトに対する理解はあるはずだ。
「ギフト……!? それじゃあユリアーナは、精霊に見初められた特別な人ってことなのね」
「大袈裟だけど……まぁ、そんな感じかな」
「すごい……! アトリアにもそういった精霊がいるようだけど、みんな会ったことすらないって。ユリアーナなら、アトリアの大精霊にも会えるかも!」
会ってみたい気持ちはある。でも、会ったらどうなるんだろう? 私はもうギフトをもらっいる。ふたつギフトをもらうなんて話は、聞いたことがない。
「ユリアーナ、本当にありがとう。私、あなたのおかげで頑張れそうな気がする」
クラーラは、ガラス細工に負けないくらいの眩しい笑顔で私にそう言った。そこにはもう、つい数十分前まで泣きべそをかいていたクラーラの面影はない。
――ニコル、私、アトリアでも友達ができたわよ!
遠く離れたエルムにいる心配性の親友へ向けて、私は心の中でそう叫んだ。
そうだ。時間があればクラーラにも、刺繍の名前入りハンカチをプレゼントしよう。もし私がいないところで、また涙を流すことがあっても、その涙を優しく拭ってあげられるように。