せっかく侍女になったのに、奉公先が元婚約者(執着系次期公爵)ってどういうことですか2 ~断罪ルートを全力回避したい私の溺愛事情~
「それなら俺じゃなくて、先生に教わったほうが……」
「でも、クラウス様のほうが教えるの上手そうだし。そうだ! 今度、生徒会室に遊びにいらして! そこで、エルムの生徒会ではどんな活動をしているのかじっくり聞かせてほしいですわ」
「……なるほど。それはお互いのためになりそうだな。俺もアトリアの生徒会がどんな企画や催しをしているのか気になるし」
「でしょうっ⁉ 決まりですわ!」
顔の前で両手を合わせて、マリー様は大喜びしている。何かしらの理由をつけて、放課後をクラウス様と一緒に過ごしたかったのだろうか。
……クラウス様も了承しちゃって。マリー様にぐいぐい迫られて、満更でもなかったりして……。
そう思うと、また胸がもやっとした。
「ねぇユリアーナさん」
もうあまり時間がないため、空になったカップを片付けていると、コンラート様に話しかけられた。
「君とクラウスって――本当にただの主人と侍女って関係?」
「……!」
きらりと、コンラート様の青い瞳が光った。
突然の質問になんと答えたらいいかわからず、私は固まる。
「……どうしてそのような質問を?」
困った結果、質問を質問で返すという、面倒なことを言ってしまった。しかし、コンラート様はあっけらかんと答える。
「だって……昨日見た限り、そうには思えなかったから」
〝昨日見た〟っていうのは、なんのことを指しているのだろうか。
学園案内をされているときは比較的に大人しくしていたし、覚えることに必死で、私とクラウス様は会話をすることすらほとんどなかった。あそこで疑われていることはほとんどない。
……それじゃあやっぱり、コンラート様が授業表を届けに寮へやって来たときのことか。
あからさまに私はクラウス様に迫られていたし、私も私で顔を熱くさせちゃったものだから、そのせいでなにかあると思わせちゃったのかも。
「俺とユリアーナは、元婚約者なんだ」
マリー様と会話しながらも、こっちのやり取りも聞いていたらしく、クラウス様がコンラート様にそう言った。
「元、婚約者……?」
「どっ、どういうことですのっ!?」
その言葉に驚いたのは、コンラート様だけでなくマリー様もである。
「そのまんまさ。俺たちは元婚約者。そこからいろいろあって、今はこういった関係性になってる」
「婚約者が専属侍女になるなんて、聞いたことがない話だな……。ユリアーナさん、君って、元々は貴族令嬢だったとか?」
「……はい。一応」
そうでないと、そもそもクラウス様の婚約者という立場になれるはずがない。コンラート様もそのことを察した上で、質問してきたのだろう。
「わかったわ。実家が没落して、路頭に迷っていたんじゃなーい? それでお優しいクラウス様が、あなたを振った代わりに情けで雇ってあげたとか……。そんな感じ?」
両手を合わせて首を傾げて、きゅるんっという効果音が出てきそうな可愛い笑顔でマリー様に言われるが、ひとつも当たっていない。
「はは。それはまったくの見当違いだ。……立場が変わっても、俺たちの関係になんの影響もない。だろ? ユリアーナ」
私が黙っていると、クラウス様がそう言った。
関係って――恋人同士から主従関係に変わっているのだから、じゅうぶん影響を受けていると思うけれど……。同意を求められても、なんと言えばいいものか。
「でも、クラウス様のほうが教えるの上手そうだし。そうだ! 今度、生徒会室に遊びにいらして! そこで、エルムの生徒会ではどんな活動をしているのかじっくり聞かせてほしいですわ」
「……なるほど。それはお互いのためになりそうだな。俺もアトリアの生徒会がどんな企画や催しをしているのか気になるし」
「でしょうっ⁉ 決まりですわ!」
顔の前で両手を合わせて、マリー様は大喜びしている。何かしらの理由をつけて、放課後をクラウス様と一緒に過ごしたかったのだろうか。
……クラウス様も了承しちゃって。マリー様にぐいぐい迫られて、満更でもなかったりして……。
そう思うと、また胸がもやっとした。
「ねぇユリアーナさん」
もうあまり時間がないため、空になったカップを片付けていると、コンラート様に話しかけられた。
「君とクラウスって――本当にただの主人と侍女って関係?」
「……!」
きらりと、コンラート様の青い瞳が光った。
突然の質問になんと答えたらいいかわからず、私は固まる。
「……どうしてそのような質問を?」
困った結果、質問を質問で返すという、面倒なことを言ってしまった。しかし、コンラート様はあっけらかんと答える。
「だって……昨日見た限り、そうには思えなかったから」
〝昨日見た〟っていうのは、なんのことを指しているのだろうか。
学園案内をされているときは比較的に大人しくしていたし、覚えることに必死で、私とクラウス様は会話をすることすらほとんどなかった。あそこで疑われていることはほとんどない。
……それじゃあやっぱり、コンラート様が授業表を届けに寮へやって来たときのことか。
あからさまに私はクラウス様に迫られていたし、私も私で顔を熱くさせちゃったものだから、そのせいでなにかあると思わせちゃったのかも。
「俺とユリアーナは、元婚約者なんだ」
マリー様と会話しながらも、こっちのやり取りも聞いていたらしく、クラウス様がコンラート様にそう言った。
「元、婚約者……?」
「どっ、どういうことですのっ!?」
その言葉に驚いたのは、コンラート様だけでなくマリー様もである。
「そのまんまさ。俺たちは元婚約者。そこからいろいろあって、今はこういった関係性になってる」
「婚約者が専属侍女になるなんて、聞いたことがない話だな……。ユリアーナさん、君って、元々は貴族令嬢だったとか?」
「……はい。一応」
そうでないと、そもそもクラウス様の婚約者という立場になれるはずがない。コンラート様もそのことを察した上で、質問してきたのだろう。
「わかったわ。実家が没落して、路頭に迷っていたんじゃなーい? それでお優しいクラウス様が、あなたを振った代わりに情けで雇ってあげたとか……。そんな感じ?」
両手を合わせて首を傾げて、きゅるんっという効果音が出てきそうな可愛い笑顔でマリー様に言われるが、ひとつも当たっていない。
「はは。それはまったくの見当違いだ。……立場が変わっても、俺たちの関係になんの影響もない。だろ? ユリアーナ」
私が黙っていると、クラウス様がそう言った。
関係って――恋人同士から主従関係に変わっているのだから、じゅうぶん影響を受けていると思うけれど……。同意を求められても、なんと言えばいいものか。