せっかく侍女になったのに、奉公先が元婚約者(執着系次期公爵)ってどういうことですか2 ~断罪ルートを全力回避したい私の溺愛事情~
破滅を回避すると決めてから、私の破滅と直接関わるクラウス様とはいちばん距離を置くつもりだった。それが今や、いちばん近い距離にいる。
共に時間を過ごしすぎたせいか、最近の私は彼と一緒にいると変にドキドキしたり、とにかく調子を狂わされていた。もはや、自分で自分がわからないときさえある。
……私の心の落ち着きを取り戻すためにも、一時的に距離を置くのはいいことだわ。
なんて、倦怠期のカップルのような発想をしつつも、内心は、寂しさもあった。
それなのに、クラウス様はちっとも寂しそうにしていない。今だって、リーゼとマシューに囲まれて、学園での思い出話に花を咲かせている。私と離れることなんて、気にも留めていないみたい。
あれだけ私に執着心を露にしておいて、結局、クラウス様にとって私の存在はその程度だったのか。そう思うと寂しさが募り、胸のもやもやが広がっていく。……ほらまた、こうやってクラウス様に調子を狂わされているのだ。
「どうしたんだユリアーナ、そんなに暗い顔をして」
複雑な心境を抱えたまま立ち尽くしている私のもとに、クラウス様がやって来た。どうやら、リーゼとマシューの輪から抜けてきたようだ。
「べつに、なんにもないですっ。それより早くふたりのところに戻ってあげてはいかがですか?」
専属侍女の私とのお別れなど、クラウス様にとって大したことではないのだろう。それならば私は侍女として、前向きにクラウス様を見送ってあげなければ。
「ユリアーナも仕事がひと段落したらおいでよ。しばらく会えないんだから」
「しばらく会えないからこそ、仲良し三人組の邪魔をしたくないというか……」
「なんだ。そんなことを気にしていたのか? だから暗い顔を?」
そういうわけではないが、そういうことにしておこう。
私が頷くと、クラウス様は優しく私の頭を撫でてこう言った。
「これは俺とユリーナを送り出す会なんだから、主役の君がもっと楽しまないと」
「……ん?」
よくわからない言葉が聞こえた。
――今なんて? 俺とユリアーナを送り出す? ええっと、それはつまり……?
「クラウス様? まさかと思いますが、私もアトリアへ行くと……?」
「当たり前だろう。君は俺の専属侍女なんだから」
「……」
さも当たり前かのように言われ、私は驚愕して声も出なかった。
「なんだ。わかってなかったのか? そのつもりでって言ったから、伝わってるとばかり思ってた。……あ、まさか暗い顔をしていたのって、俺と離れるのが寂しかった? 馬鹿だなぁユリアーナは。俺が君を置いてどこかへ行くわけないじゃないか」
「ち、違いますっ! ぜんっぜん違いますから!」
すべて見透かされているのも、勝手に勘違いをしていたことも恥ずかしい。
というか、これはクラウス様が悪い。私も一緒ならはっきりそう言ってくれないとわからないじゃない……!
しかし、後から聞けばみんなは最初からそれを知っていたらしい。それを聞いて、エディが私を心配してくれたことがやっと理解できた。
そしてパーティー終了後、私はニコルに泣きついて、一晩で旅立ちの荷造りを済ませることとなった。
共に時間を過ごしすぎたせいか、最近の私は彼と一緒にいると変にドキドキしたり、とにかく調子を狂わされていた。もはや、自分で自分がわからないときさえある。
……私の心の落ち着きを取り戻すためにも、一時的に距離を置くのはいいことだわ。
なんて、倦怠期のカップルのような発想をしつつも、内心は、寂しさもあった。
それなのに、クラウス様はちっとも寂しそうにしていない。今だって、リーゼとマシューに囲まれて、学園での思い出話に花を咲かせている。私と離れることなんて、気にも留めていないみたい。
あれだけ私に執着心を露にしておいて、結局、クラウス様にとって私の存在はその程度だったのか。そう思うと寂しさが募り、胸のもやもやが広がっていく。……ほらまた、こうやってクラウス様に調子を狂わされているのだ。
「どうしたんだユリアーナ、そんなに暗い顔をして」
複雑な心境を抱えたまま立ち尽くしている私のもとに、クラウス様がやって来た。どうやら、リーゼとマシューの輪から抜けてきたようだ。
「べつに、なんにもないですっ。それより早くふたりのところに戻ってあげてはいかがですか?」
専属侍女の私とのお別れなど、クラウス様にとって大したことではないのだろう。それならば私は侍女として、前向きにクラウス様を見送ってあげなければ。
「ユリアーナも仕事がひと段落したらおいでよ。しばらく会えないんだから」
「しばらく会えないからこそ、仲良し三人組の邪魔をしたくないというか……」
「なんだ。そんなことを気にしていたのか? だから暗い顔を?」
そういうわけではないが、そういうことにしておこう。
私が頷くと、クラウス様は優しく私の頭を撫でてこう言った。
「これは俺とユリーナを送り出す会なんだから、主役の君がもっと楽しまないと」
「……ん?」
よくわからない言葉が聞こえた。
――今なんて? 俺とユリアーナを送り出す? ええっと、それはつまり……?
「クラウス様? まさかと思いますが、私もアトリアへ行くと……?」
「当たり前だろう。君は俺の専属侍女なんだから」
「……」
さも当たり前かのように言われ、私は驚愕して声も出なかった。
「なんだ。わかってなかったのか? そのつもりでって言ったから、伝わってるとばかり思ってた。……あ、まさか暗い顔をしていたのって、俺と離れるのが寂しかった? 馬鹿だなぁユリアーナは。俺が君を置いてどこかへ行くわけないじゃないか」
「ち、違いますっ! ぜんっぜん違いますから!」
すべて見透かされているのも、勝手に勘違いをしていたことも恥ずかしい。
というか、これはクラウス様が悪い。私も一緒ならはっきりそう言ってくれないとわからないじゃない……!
しかし、後から聞けばみんなは最初からそれを知っていたらしい。それを聞いて、エディが私を心配してくれたことがやっと理解できた。
そしてパーティー終了後、私はニコルに泣きついて、一晩で旅立ちの荷造りを済ませることとなった。