せっかく侍女になったのに、奉公先が元婚約者(執着系次期公爵)ってどういうことですか2 ~断罪ルートを全力回避したい私の溺愛事情~
「憂鬱だったんですか?」
「え? ……だって、勝手が知らない場所へ行くのって、最初は面倒に思うだろう」
クラウス様は、見知らぬ場所へ行くのを楽しむのではなく、億劫に思うタイプなのか。少し意外だ。
「アトリアはエルムより魔法が発展した、いわゆる魔法発展国だ。俺の魔力がどこまで通用するか楽しみだな」
魔法発展国と聞くだけで、私もわくわく感が増してくる。
「アトリアにも、ギフトを授けてくれる精霊がいると聞きました。三か月で会えたらラッキーと思いますが、見てみたいなって」
「たしかに、どんな精霊なんだろうな。うちにいるのは癖が強すぎるから、いい精霊だったら交代してほしいくらいだ」
エルムの大精霊ティハルトは、大の女好きのため男の前に滅多に姿を現さない。その中でも一度ティハルトと対面しているクラウス様は、かなりレアといえる。
「ほかにもいろんな精霊がいると聞いたから、会えたらいいな」
そう言って、クラウス様は私に笑いかける。……いつものクラウス様だ。シュトランツ公爵と話していたときとは違って、表情が柔らかい。
「……あの、クラウス様」
「どうした?」
「さっき、シュトランツ公爵となにを話していたんですか?」
少し気になって、本人に聞いてみる。
「べつに? しっかりやってこいとか、結果を残せとか、そういった話だ」
「……なるほど」
「いつまで経っても俺に次期公爵になるための圧をかけてくるんだから、参るよ。しっかり成績も残してるのに」
やれやれと、クラウス様は肩をすくめる。
「ユリアーナのところは楽しそうだったよな。家族みんながユリアーナ大好きで」
「え? ああ……私、甘やかされてましたからね……」
その結果、小説のユリアーナはあんなわがままに育ったわけだが。でも、基本的にみんな優しくて、楽しい家族だとは思う。娘に甘すぎるのは玉に瑕だけど。
「しばらく会ってないけど、そのうちまた改めて会いに行かせてもらおうかな」
「ふふ。私も久しぶりに会いたくなってきました」
アトリアに留学するなんて言ったら、心配性の家族は断固反対したかもしれない。帰って来てから報告することにしよう。
それからも、クラウス様と他愛もない話をしていた。
アトリアまでは、一日馬車を走らせなければならない。そのため、今日は馬車の中で眠りにつくこととなる。しかし、さすが名家シュトランツ。馬車は高級なもので中は広く、寝ても身体が痛くない作りになっている。揺れさえ気にならなければ、まったく問題はない。
食事なども併せて途中休憩を何度か挟み、段々と外が暗くなっていくにつれて、眠気が襲ってきた。
昨日は深夜まで荷造りをしていたし、今日も早起きでバタバタだったため、若干の疲労感が残っていた。
楽しみではあるけど……アトリアで破滅フラグが立たないよう気を付けないと。
脳内でぼんやりとそんなことを考えているうちに、気づけば私は眠りに落ちていた。
「え? ……だって、勝手が知らない場所へ行くのって、最初は面倒に思うだろう」
クラウス様は、見知らぬ場所へ行くのを楽しむのではなく、億劫に思うタイプなのか。少し意外だ。
「アトリアはエルムより魔法が発展した、いわゆる魔法発展国だ。俺の魔力がどこまで通用するか楽しみだな」
魔法発展国と聞くだけで、私もわくわく感が増してくる。
「アトリアにも、ギフトを授けてくれる精霊がいると聞きました。三か月で会えたらラッキーと思いますが、見てみたいなって」
「たしかに、どんな精霊なんだろうな。うちにいるのは癖が強すぎるから、いい精霊だったら交代してほしいくらいだ」
エルムの大精霊ティハルトは、大の女好きのため男の前に滅多に姿を現さない。その中でも一度ティハルトと対面しているクラウス様は、かなりレアといえる。
「ほかにもいろんな精霊がいると聞いたから、会えたらいいな」
そう言って、クラウス様は私に笑いかける。……いつものクラウス様だ。シュトランツ公爵と話していたときとは違って、表情が柔らかい。
「……あの、クラウス様」
「どうした?」
「さっき、シュトランツ公爵となにを話していたんですか?」
少し気になって、本人に聞いてみる。
「べつに? しっかりやってこいとか、結果を残せとか、そういった話だ」
「……なるほど」
「いつまで経っても俺に次期公爵になるための圧をかけてくるんだから、参るよ。しっかり成績も残してるのに」
やれやれと、クラウス様は肩をすくめる。
「ユリアーナのところは楽しそうだったよな。家族みんながユリアーナ大好きで」
「え? ああ……私、甘やかされてましたからね……」
その結果、小説のユリアーナはあんなわがままに育ったわけだが。でも、基本的にみんな優しくて、楽しい家族だとは思う。娘に甘すぎるのは玉に瑕だけど。
「しばらく会ってないけど、そのうちまた改めて会いに行かせてもらおうかな」
「ふふ。私も久しぶりに会いたくなってきました」
アトリアに留学するなんて言ったら、心配性の家族は断固反対したかもしれない。帰って来てから報告することにしよう。
それからも、クラウス様と他愛もない話をしていた。
アトリアまでは、一日馬車を走らせなければならない。そのため、今日は馬車の中で眠りにつくこととなる。しかし、さすが名家シュトランツ。馬車は高級なもので中は広く、寝ても身体が痛くない作りになっている。揺れさえ気にならなければ、まったく問題はない。
食事なども併せて途中休憩を何度か挟み、段々と外が暗くなっていくにつれて、眠気が襲ってきた。
昨日は深夜まで荷造りをしていたし、今日も早起きでバタバタだったため、若干の疲労感が残っていた。
楽しみではあるけど……アトリアで破滅フラグが立たないよう気を付けないと。
脳内でぼんやりとそんなことを考えているうちに、気づけば私は眠りに落ちていた。