せっかく侍女になったのに、奉公先が元婚約者(執着系次期公爵)ってどういうことですか2 ~断罪ルートを全力回避したい私の溺愛事情~
アトリア魔法学園
森を抜けて街で朝食を食べた後、私たちは留学先となるアトリア魔法学園へと向かった。学園へ着くころには、時刻は十三時を回っており、ちょうどお昼過ぎくらいの時間帯だった。
学園は王都の敷地内に建設されており、王宮も見える距離にある。あそこに、アトリアの王族が住んでいるのだろう。
さすが魔法がエルムより進んでいるだけあって、学園の敷地もエルムより広い。高級さはさほど変わらないが、いろいろな施設が用意されていて、環境はこちらのほうが整っているといえる。
「すごいな。学園専用の地下迷宮もあるみたいだ。いろんな実習ができて、楽しそうだな」
「ふふ。本当ですね」
いつも大人っぽいクラウス様が、子供のように目を輝かせている。その様子を見て、私は自然と笑みがこぼれた。
そのままアトリアの案内人に、学園長室へと連れていかれる。話は既に通っているため、簡単な挨拶と雑談で、あっさりと学園長との顔合わせは終了した。学園長は髭の生えたダンディなおじさんという感じで、優しそうな人だった。
「お次は生徒会長室にご案内いたします」
案内人に言われ、私とクラウス様は生徒会室へ向かうことになった。生徒会室は一階の突き当りに用意されており、学園長室からは少し離れた距離にあるようだ。
「着きました。こちらへどうぞ」
案内人が生徒会室の扉を開けると、そこには二名の生徒がクラウス様を待ち構えていた。扉が開いた瞬間、ふたりの目線がこちらへと向く。
「失礼。今日から三か月、この学園で共に学ばせていただく、エルム魔法学園生徒会長、クラウス・シュトランツだ」
クラウス様は初対面の相手になにも動じることなく自ら歩み寄ると、胸を張って挨拶を始めた。……すごい。私だったら緊張して、声が裏返るとか無駄に早口になるとかしそうなのに。
突然の挨拶に相手側は拍子抜けしたようだったが、すぐに笑顔を作って、ひとりの男子生徒が口を開いた。
「これはご丁寧にありがとう。そしてようこそ。我がアトリア魔法学園へ。僕は同じく生徒会長を務めている、コンラート・アンデルスだ。よろしく」
物腰柔らかい雰囲気のコンラートと名乗る男子生徒は、これまたびっくりするほど整った顔立ちをしていた。魔法学園の生徒会長は、イケメンでないとなれないって規則でもあるのだろうか。
ふわっとした青い髪に、今日見た空のように澄んだ水色の瞳。少し切れ長の形の目をしているクラウス様と違って、彼の瞳はたれ気味で、それがまた絶妙な〝いい人感〟を醸し出している。
背もクラウス様と同じくらい高いし……うん、これはモテモテだろうなぁ。
「アンデルスって……」
私が勝手にコンラート様を分析していると、クラウス様がなにかに気づいたような反応を返した。
「ああ。一応、王家の人間なんだ。第二王子だけどね」
こんなイケメンで、しかも王族……!? しかもそれを自慢せず、むしろ謙遜している。こんな親切そうな完璧王子が実在するとは。
「だけどここでは同級生だし、なんの気も遣わず、普通に接してくれると助かるよ」
「そうか。それじゃあお言葉に甘えてそうさせてもらおう」
クラウス様は王族相手でも関係がないらしい。言われたまま受け取って、敬語を使うことなく普通に返事をしている。初めて会ったばかりの王子相手に、なかなかやるなと私は思った。
「はーいっ。次はわたくしの番ですわね。わたくし、副会長のマリーと申します。アトリアでは三本指に入るほどの数の領地を抱えている、ドレーゼ伯爵家の娘ですわ。仲良くしてくださいねぇ。クラウス様」
もうひとりは女子生徒で、マリーというようだ。とても可愛らしく甘い声をしている。見た目は金色の長い髪を高い位置で結んでいる――いわゆる、ツインテールというやつだ。丸くて大きな瞳は赤色で、ルビーのような煌めきを放っている。肌も白くて髪もつやつやで、文句なしに美少女である。
……だけど同じ金髪なら、私はリーゼのほうがタイプかな。
だってリーゼはおしとやかで可憐で清楚で、まさにヒロインって感じなんだもの! ああ、マリー様を見ると突然リーゼが恋しくなってきたわ!
私が心の中でリーゼに想いを馳せていると、急に熱い視線を感じた。はっとしてそちらを見返すと、なぜか私がマリー様にガン見されていた。
しかも、上から下までじっくりと。なんだか、品定めされているような気分だ。
「クラウス様、こちらのお方は?」
マリー様がクラウス様に聞くと、クラウス様は私の肩をぐいっと引き寄せて言う。
学園は王都の敷地内に建設されており、王宮も見える距離にある。あそこに、アトリアの王族が住んでいるのだろう。
さすが魔法がエルムより進んでいるだけあって、学園の敷地もエルムより広い。高級さはさほど変わらないが、いろいろな施設が用意されていて、環境はこちらのほうが整っているといえる。
「すごいな。学園専用の地下迷宮もあるみたいだ。いろんな実習ができて、楽しそうだな」
「ふふ。本当ですね」
いつも大人っぽいクラウス様が、子供のように目を輝かせている。その様子を見て、私は自然と笑みがこぼれた。
そのままアトリアの案内人に、学園長室へと連れていかれる。話は既に通っているため、簡単な挨拶と雑談で、あっさりと学園長との顔合わせは終了した。学園長は髭の生えたダンディなおじさんという感じで、優しそうな人だった。
「お次は生徒会長室にご案内いたします」
案内人に言われ、私とクラウス様は生徒会室へ向かうことになった。生徒会室は一階の突き当りに用意されており、学園長室からは少し離れた距離にあるようだ。
「着きました。こちらへどうぞ」
案内人が生徒会室の扉を開けると、そこには二名の生徒がクラウス様を待ち構えていた。扉が開いた瞬間、ふたりの目線がこちらへと向く。
「失礼。今日から三か月、この学園で共に学ばせていただく、エルム魔法学園生徒会長、クラウス・シュトランツだ」
クラウス様は初対面の相手になにも動じることなく自ら歩み寄ると、胸を張って挨拶を始めた。……すごい。私だったら緊張して、声が裏返るとか無駄に早口になるとかしそうなのに。
突然の挨拶に相手側は拍子抜けしたようだったが、すぐに笑顔を作って、ひとりの男子生徒が口を開いた。
「これはご丁寧にありがとう。そしてようこそ。我がアトリア魔法学園へ。僕は同じく生徒会長を務めている、コンラート・アンデルスだ。よろしく」
物腰柔らかい雰囲気のコンラートと名乗る男子生徒は、これまたびっくりするほど整った顔立ちをしていた。魔法学園の生徒会長は、イケメンでないとなれないって規則でもあるのだろうか。
ふわっとした青い髪に、今日見た空のように澄んだ水色の瞳。少し切れ長の形の目をしているクラウス様と違って、彼の瞳はたれ気味で、それがまた絶妙な〝いい人感〟を醸し出している。
背もクラウス様と同じくらい高いし……うん、これはモテモテだろうなぁ。
「アンデルスって……」
私が勝手にコンラート様を分析していると、クラウス様がなにかに気づいたような反応を返した。
「ああ。一応、王家の人間なんだ。第二王子だけどね」
こんなイケメンで、しかも王族……!? しかもそれを自慢せず、むしろ謙遜している。こんな親切そうな完璧王子が実在するとは。
「だけどここでは同級生だし、なんの気も遣わず、普通に接してくれると助かるよ」
「そうか。それじゃあお言葉に甘えてそうさせてもらおう」
クラウス様は王族相手でも関係がないらしい。言われたまま受け取って、敬語を使うことなく普通に返事をしている。初めて会ったばかりの王子相手に、なかなかやるなと私は思った。
「はーいっ。次はわたくしの番ですわね。わたくし、副会長のマリーと申します。アトリアでは三本指に入るほどの数の領地を抱えている、ドレーゼ伯爵家の娘ですわ。仲良くしてくださいねぇ。クラウス様」
もうひとりは女子生徒で、マリーというようだ。とても可愛らしく甘い声をしている。見た目は金色の長い髪を高い位置で結んでいる――いわゆる、ツインテールというやつだ。丸くて大きな瞳は赤色で、ルビーのような煌めきを放っている。肌も白くて髪もつやつやで、文句なしに美少女である。
……だけど同じ金髪なら、私はリーゼのほうがタイプかな。
だってリーゼはおしとやかで可憐で清楚で、まさにヒロインって感じなんだもの! ああ、マリー様を見ると突然リーゼが恋しくなってきたわ!
私が心の中でリーゼに想いを馳せていると、急に熱い視線を感じた。はっとしてそちらを見返すと、なぜか私がマリー様にガン見されていた。
しかも、上から下までじっくりと。なんだか、品定めされているような気分だ。
「クラウス様、こちらのお方は?」
マリー様がクラウス様に聞くと、クラウス様は私の肩をぐいっと引き寄せて言う。